透、入学する! 17
「俺さ、妹がいるんだよね」
小声で沢木にささやく。
「……へぇ? そうなんだ」
いきなり妹の話を始めた俺に、沢木はキョトンとしながらも相づちを返した。
「こないだ、妹が不良に絡まれたらしいんだけど、その時にどこぞの不良サンが颯爽と助けてくれたんだと」
「何、その漫画みてぇな設定」
沢木が苦笑する。
「知るかよ。でさ、昨日たまたま俺の顔を見て以来、アイツはあの調子」
いきなり早川の話に戻って、沢木はちょっと混乱していた。
「……どゆこと?」
「俺と妹ってさ、双子でそっくりなの」
そう言って、俺はにっこりと笑った。
「…………」
しばらく考え込んでいた沢木だったが、急にブハッと吹き出す。
「つまりアイツ……その時に助けたのがトールちゃんだと勘違いしてるワケ?」
「しかもあの感じだとさ、うちの妹に一目惚れっぽくない?」
「……っ!! っぽい!」
沢木は腹を抱えてゲラゲラ笑い始めた。
「この話、早川には内緒な」
唇に人差し指を当てて沢木に念を押すと、笑いながら「イワネーヨ」と約束してくれた。
「いやー、笑った笑った。トールちゃんってば意外に腹黒い」
「妹想いと言ってくれ」
「トールちゃんと妹って、そんなに似てるの? めっちゃカワイイだろうなぁ。俺に紹介してヨ」
「……不良にはやらん」
「つめたっ」
その後もしばらく沢木は笑い続けていたが、しばらくするとベンチに背を預けて、伸びをした。
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