透、入学する! 13
初の測量の授業は、木戸先生から機材の名前や使用目的などをひとつひとつ教わり、なかなか有意義な時間だった。
不良たちもそれなりに真剣に聞いていたし、機材を触らせてもらった時は笑顔も見せていた。きっとこういう機械をいじるのが好きなんだろう。
授業の後に今日の要点をメモしていると、沢木がノートを覗いてきた。
「うわ、優等生! テスト前にノート貸してね、トールちゃん」
「いいよ。にしても、沢木たちも結構マジメに授業受けてるのな。意外だった」
「ん? 俺が不良だからか?」
「ぶっちゃければそうかな」
俺が素直に頷くと、沢木は複雑な表情で「物怖じしねぇなぁ」と呟いた。
「三年間一緒にいる相手に遠慮してどうすんだよ」
「ふつー、目に付いたらパシリにされるんじゃないか、って心配するんじゃねぇの?」
「何だ、俺をパシリにしたいの? 沢木はそんなことしないだろ。美学的に」
「んー。トールちゃん、持ち上げるのがうまいね!」
沢木はにんまりと笑った。
「ま、俺がハチコーに進んだのって、木戸サンと須藤サンがいる、っつーのが理由だからな。お二人の顔を潰すわけにゃいかんのよ」
木戸……ってのは、ひょっとしなくても木戸先生か。
「須藤さんって誰?」
「ァア? 入学式ん時に見たろうがよ」
どこかで聞いた名だと思ったら、昭和から抜け出てきた長ラン兄ちゃんか……。
「なるほど、生徒会長ね。……ただ者じゃないとは思ったよ」
「っだろ?!」
一瞬ヤンキーモードに突入しかけた沢木だったが、俺のフォローに何とか機嫌を持ち直して破顔した。
うん。こいつも豹じゃなくて、ちょっと大きめの犬に見えてきた。
「木戸先生も知り合いなの?」
「知り合いっつーか。昔、《最凶の龍虎》って呼ばれて、ここら一帯をシメてた伝説の総長だぜ? そんな人に直々に授業受けられるなんて、すごくね?」
こくり。
よくぞ更正したな、木戸先生。
ふと振り向くと、井原はちょいと涙目だった。……3年間、頑張ろうぜ。
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