透、入学する! 2
ハチコーには「ヤンコー」なんていう別名もあり、周囲に知れ渡るヤンキー高校だったりする。
ハチコーは元々男子校だったけれど、少子化の影響で共学になったそうだ。とはいえ、わざわざ悪名高きハチコーに来る女子は極めて少ない。
ちなみに、俺は不良ではない。他に行くところがなかったどん底のバカってわけでもない。
なぜわざわざハチコーを選んだかというと、父親が土建屋を営んでいるからだ。
普通高校卒業後に工業大学に行って……というお定まりのコースはまどろっこしいというか、どうせ家の仕事を手伝うことが決まっているのなら、わざわざ金をドブに捨てるような真似をしたくなかったわけで。
中学の時は朝刊配達のバイトをしていたけれど、その時のバイト代は月に1万円ちょい。大学に4年間通う費用300万円は果てしない。
親にそんな負担を……というか、あの“クソ親父”にあまり借りをつくりたくない。
というわけで、工業高校の土木科に進むことを迷うことなくチョイス。
双子の妹の那由にその話をしたら、「お兄ちゃんは相変わらずリアリストだね」と笑われた。
一方、妹の那由はというと、花椿女学院に合格した。こちらは私立のお嬢様学校だが、猛勉強の末に那由は特待生の席を獲得したのだ。もちろん親に負担をかけたくなくて。
那由は一見ぼんやりしているようでいて、まあそこは兄妹というか、考える方向性はやっぱり似ている。
俺の妹は、兄である俺の目から見ても本当に可愛い、と思う。
身長150cmあるかないかの小さな身体。色白の肌に桜色の唇。黒目がちでウルウルの瞳。透明感のある茶髪はふんわりとしたショートヘアに。
まず美少女と言って差し支えない。よく某アイドルグループのナントカちゃんに似てる、と言われるくらいだ。
だが、それが男の俺に置き換えるとどうなるか、というと。
下手すると小学生の女子にも負ける身長。ひ弱に見える白い肌。ハードスプレーをぶっかけても立つことを断固拒否する猫っ毛。残念きわまりない。
見た目が男らしくないのは自分でも気にしていて、小学生の頃から色々と習ったけれど、残念ながら背が伸びることもムキムキになることもなかった。
ま、この身長でムキムキだったら気持ち悪いからいいけどさ。
俺はいまだ訪れぬ第二次成長期を今か今かと心待ちにしている。
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