透、契約する! 13
「惜しい。はずれたな」
「……ッ!!」
カッとなって拳を振り回すが、ルネには簡単に避けられた。くそっ、この酔っぱらいっ!
「お土産のお礼な」
「勝手に押しつけて勝手にもらうな!」
ケタケタ軽薄に笑う顔までイケメンで腹立たしい。
「やっぱ、トールは噛みついてくるくれーの方が面白れーよ」
「はぁ?!」
「なんか元気なかったぜ? 今なら余裕で勝てそう」
そんなコトを言いながらルネは俺の髪の毛をくしゃりと撫でて、俺よりも先に石段を駆け上がって行った。
「そのうち絶対にリベンジしてやる……」
俺がそう呟くと、ルネがちょっと振り返って余裕のVサインを返しやがった。
ムカツク。その余裕も。あんな空気読めなさそうな男に慰められてたことも。
ちょっと元気出ちゃった俺も。
その背中を追いかけ、気配に振り向いたルネにフライング・ラリアットをかました。
「グハァッ?!」
避けきれずに思いっきり喰らったルネに、俺はニヤリと口元を歪ませる。
「さっきのお礼」
「上等……」
スイッチの入りかけたルネを見てとった俺は、クルリと向きを変えて、全速力で駆け出した。
「テメェ、逃げんなコラッ?!」
走っているうちに何だかおかしくなって、速度をゆるめながら白む東の空に笑った。
「……何笑ってんだ、コノ」
追いついてきたルネが、俺の頭をポコッと叩いた。
「俺、やっぱお前のこと、わりと好きみたいだ」
そう言うと、ルネは片眉を上げて「うちのチームに入るか?」と訊いてきたから、「嫌なこった」と断固断った。
「上げたり下げたり、面倒くせぇヤツだなぁ」
と言いながらも、ルネは笑う。
チームだとか、仲間だとか、そんな“契約”はいらない。
ただ、自分の思うままに動き、ありのままの俺を見てくれるルネが、俺には眩しかった。
続く
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