・アイツの隣編2 ――お前。 そんな顔するくらいなら、最初から清に暴力振るったりすんなよ。 本当はお前も……守りたかったんだろう? 小学校、何年の頃に出会ったって言ってただろうか。 もし……もし、お前がずっと清の横にいたら。 俺はここにいなかったんだろうな。 そう思い至って、俺はぶるりと寒気が走った。 俺は、お前が清を一度手放した事に感謝すべきなんだろうか。 自分の中のドロドロと吹き出す醜い感情に吐き気がした。 俺に、清を縛る権利なんてないのに。 里親の元にいられるのも、18歳まで――場合によっては20歳まで、だったか。それまでに、何とか身を立てないと……。 俺がいなくても、清を守ってくれそうなヤツが現れたことに、少しだけ――ホッとした。 清が、「お茶でも淹れてくる」と部屋を出て行った。 俺はゲームの電源を入れて、飛鳥に2コンを渡す。飛鳥は何も言わずに受け取った。 黙々と対戦する。 俺と飛鳥のゲームの腕前は似たようなものだ。清には未だに一度も勝ったことがないから、遊ぶなら飛鳥との方が面白い。 俺はお気に入りのキャラをメインで使うけれど、飛鳥は色々なキャラを満遍なく使う。ただ、俺の一番のお気に入りのキャラだけは絶対に使おうとしなかった。 コイツはいつも変なところに気を遣う。 「……心配しなくても、お前のを取ったりしねーよ」 飛鳥がぽつりと言った。 「別に。遠慮無く使えば?」 「つ、使うって……ああ、ゲームキャラな」 少し慌てて棒立ちになった飛鳥のキャラを、俺は必殺技でブッ倒した。 *** 芹沢君は、「飛鳥になら清を取られても仕方がない」と思っている。 飛鳥君は、「太田がいなくなったら芹沢は壊れる」と知っている。 (2011.10.9拍手) [*prev][next#] [戻る] |