"土方、だろ"
ハッと目覚めたように目を開く。
頭に浮かぶのは、鬼の副長と呼ばれる
煙草をいつも口にくわえた
不器用に優しい私の――
「彼氏…からだ、ろ…出なくていい、の…?ん、はっ」
「い、やっあ、あ、…ん、っや」
腕を振るって無理やりにでも逃げることはできる。
でも私はそれをしないでいる。
長い口づけの後、彼はまた力一杯私を抱きすくめた。
携帯の音はいつのまにか止んでいた。
「…離して」
「なんで?」
きらいだから
そう嘘をつくにはもう、あなたに溺れすぎていた。
真っ直ぐ瞳を見据えて私は告げた。
「……すきになってしまうわ」
掌を彼の頬にあて、そこから首、胸のあたりまでゆっくり這わす。
トサッとふたり、ソファに倒れ先程以上に求め合う。
彼は舌を身体中這わすため、邪魔な衣服(もの)は全て取り去る。
私は腕を彼の首にまわし、時折爪をたてる。
お互いの、荒い呼吸と肌の温もりがあれば幸せと思えた。
「……愛してる」
再び鳴り響いた着信音は
目の前の熱でかき消された。