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あなたを忘れたいのに

※土妙→←銀
少し大人向け注意(R15)






「行くなよ」
掴まれた腕、貴方の視線。
全部全部、私を苦しくさせる。

「…ごめんなさい。離して」
「離せねえ」
「離して」

強い口調で言い放つ。
傷つけたいわけじゃない。
でも、傷ついてほしい、今は。
私のことを嫌いになって欲しいから。


「きらいです」
「あなたがきらいなの」
ぱんっと手を振りほどく。
しかし前に進むに進めない。
なぜならすぐに、抱きすくめられたから。

「俺のこと嫌い?」
「嫌いです」
「ちゃんと目見て言えよ」
ぐいと顔を上に向かされた。
逸らすのが難しい距離。
赤い瞳からは怒りも哀しみも見えず
ただ熱を感じた。
動きたいのに、動けなかった。
ゆっくりと顔が近づいてくる、その時。

ピリリリリピリリリリ


私の携帯から響いたのは電話の着信音。
彼の腕から直ぐさま離れ携帯に出ようとした。

しかしそれは叶わなかった。
画面を開き、通話ボタンを押す瞬間。
彼は強引に私の唇を奪ってきたのだ。

「なに……っ」簡単に逃がすものかと、我を失うほどに舌をからめさせられる。

携帯はカシャンと音をたて、冷たい床に。

「電話、誰からだった?」
「関係、ない…っや、あっ」
「当ててやろうか」

面白がっているのだろうか。
息が耳元で震えた。


"土方、だろ"


ハッと目覚めたように目を開く。
頭に浮かぶのは、鬼の副長と呼ばれる
煙草をいつも口にくわえた
不器用に優しい私の――
「彼氏…からだ、ろ…出なくていい、の…?ん、はっ」

「い、やっあ、あ、…ん、っや」

腕を振るって無理やりにでも逃げることはできる。
でも私はそれをしないでいる。



長い口づけの後、彼はまた力一杯私を抱きすくめた。
携帯の音はいつのまにか止んでいた。

「…離して」
「なんで?」

きらいだから
そう嘘をつくにはもう、あなたに溺れすぎていた。
真っ直ぐ瞳を見据えて私は告げた。

「……すきになってしまうわ」

掌を彼の頬にあて、そこから首、胸のあたりまでゆっくり這わす。

トサッとふたり、ソファに倒れ先程以上に求め合う。
彼は舌を身体中這わすため、邪魔な衣服(もの)は全て取り去る。
私は腕を彼の首にまわし、時折爪をたてる。

お互いの、荒い呼吸と肌の温もりがあれば幸せと思えた。

「……愛してる」

再び鳴り響いた着信音は
目の前の熱でかき消された。


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あきゅろす。
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