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言葉はきちんと教えましょう






何故こんなことになったのだろうかとこの国の主以外のことで珍しく頭を痛めながらジェイド・カーティスは思う。

そんなジェイドの隣にいるのはなんの罪も邪心もない、可愛らしい子供だ。この国にいる兵士達がこの状況を見たらなんの冗談なのかと目を疑うだろう。それか、ついに…、ともらすか。なにがついになんだとその想像にジェイドは言葉をつげる。
…想像にたいして文句をいうという不毛でしょうがないことをしてしまう程にはジェイドは今の状況にまいっていた。

ちらりと紅い瞳を子供に向ける。普通の子供なら、その視線だけで泣き出してしまう(いわく、目が怖い、らしい。喰われるって思われてるんじゃないかと大人の格好をした子供である幼なじみは大笑いした。)はずなのに子供はきょとんとした視線を返しただけ。


それにはぁ、とため息をもらした。
何故この子供はここにいるのだろうか。何を気に入って自分の側にいるのか。しかも強制的に引き離すと泣き出す始末。その証拠に子供に泣きながらひっぱられた袖はもうぐでんぐでんになっていた。
どこにそんな力があるのか…

子供をまじまじと見ると、泣きすぎて喉が渇いていたのかオレンジジュースをごくりごくり飲んでいた。
……それを見てもう一度、本当に困った、といつになく真剣に思う。自分と引き離すとあまりにも泣いて喚いて仕方ないので身元引き受け人になってしまったのだ、が。

子供の育て方どころか子供との接っ仕方すらジェイドはしらない。
困った時は年の功だと以前からお世話になっているマクガヴァン元帥を尋ねると、自分の子供時代を考えろといわれたが、はてと考えてみる。
己に子供らしい所はあっただろうか。…なかっただろう。
ので、とりあえず急遽用意したこの子供の部屋に子供が好きらしいおもちゃをつめてみた。
そうすればとりあえず泣くことはなくなるだろう。もしかしたら部屋で遊びはじめるのではないか。そんな淡い期待をしながら子供を部屋に通したのだが、今はこれだ。
つまり、離れれば泣くし、もちろん一人で部屋にいることもなかったという意味だ。
部屋に通したとき確かに子供はその小さな瞳をまるくしてうれしそうにしていたというのに。


(何故でしょう、か)

慣れないことに多少疲れを感じ、かけていた眼鏡をはずして少しだけ瞳をほぐす。
ここに一般の兵士がいたら、あの怪物大佐が…というかもしれない。任務や雑用をいくらしても笑って受け流すジェイドにとって本当に珍しい動作だろう。
ふぅとため息をついてから、下に目をむけるとじっとこちらを見つめる子供と目があった。その真っ直ぐな瞳に少したじろいでからふとあることに気づく。
これはこちらを、というより、おそらくこの子供はこれを見ているのだろう。
手の中にあるそれを子供の目線に落とす。


「…眼鏡、ですよ」

め、が、ね、
もう一度いいながら子供の手の平にそれをのせる。
まぁガラス、というわけでも、度がはいっているわけでもなんでもないし、大丈夫だろう。
ぱちりぱちりと子供はまばたきする。
熱心なその姿にそんなに気になるものだろうかとジェイドは無意識にクスリと笑う。
(なにをそんなに気になっているのか。子供は不思議な生き物だ。)
ぼんやり考えていると突然子供が笑顔になりジェイドは少し驚く。
どうかしましたか、問うとにこにこと笑ったまま、「じぇど!」といった。


眼鏡を握り、なんどもじぇどじぇどという子供に、さて、その『じぇど』とは自分をさしているのかそれとも手の中にあるそれをさしているのかと死霊使いはまじめに考えた。











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眼鏡は顔の一部です。
びっくりするほど前回から時間がたってない舞台です。の、割にジェイドは疲れてます。だって子供の扱いなんて知らないもの。
元帥は楽しんでます。悪い人です。
喜一も楽しんでます。ごめんなさい


あきゅろす。
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