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確かに私はいなかったのです




ジェイド、と何もいわずにただただ抱きしめてくる大人の名前を呟く。抱きしめてくる、というか倒れるようにもたれ掛かるのをルークがなんとか支えているといったほうがいいのか。
なんだかなぁと思いながら、扉の前では寒いからとりあえず中に入れようと歩く。
どうやらジェイド自身は歩くのに協力するつもりも離れるつもりもないらしく、その長身をルークがずるずる引きずって歩く。少し、身長差が恨めしい。
定位置になりつつあるソファーまでたどり着いてあぁこれでは座れないなぁと苦笑してもこもこした地面をみる。
まぁいいか、小さく頷いて地べたに座る。テーブルとソファーの間であるから少し狭いが、妙に落ち着くからルークは好きだった。
よくわからないが、ジェイドはたまにこうなった。普段はそっけないといってもいいほどの態度をとるくせに、こうなったら始終ルークと共にいようとする。
ただ、お帰りとルークがいった瞬間だったり、おはようと挨拶を返した時だったり、ともかく普通にしていた時に突然なるのでルークには何がきっかけになってこうなるのか全くわからなかった。
次の日にはそんなことあったなんて思わせないような表情でいるのに。
ふぅと息をはくと、ジェイドは抱きしめる力を強くした。
逃げねぇって、と先程から無言を貫き通しているジェイドにいうが、中々力を緩めないのでしかたないなぁとあやすようにぽんぽんと背中を叩いた。

たぶん、なんか不安になったのだ。きっと。どんなきっかけでこうなるのかルークにはわからない。けれど原因は、きっとルークにあった。
ルークがいなかった間、ジェイドはどうしていたのだろうと自分がいない時間を思う。
大丈夫なのだと思っていた。一人でも平気なんだと思っていた。
だってこの大人は別れる直前まで、平気そうな顔をしていたのだ。けれどそうではなかったらしい。ルークはいなかったからわからないけれどそうらしい。


しかたないなぁ、と呟いて不器用な大人の背中を叩く。

「…大丈夫。俺はもういなくならないから。ここにいるから。」

本気で思っているということが伝わればいい。俺は、ここにいる。だから、大丈夫だから。
しばらくしてやっと緩んだ力に気づき、泣きそうになる。
泣きそうになりながら、それでも笑い、明日にはいるだろうそっけない大人を思った。
思って、いとしいなぁと呟く。
一緒にいられるこの時間も、不器用な大人も。













あきゅろす。
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