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いいたい事をいえたら楽なのにね





世界をキラキラしてるよなと子供が笑う、本来ならほほえましいはずのその光景、しかしそれが、





「…腹がたつんです」

何故でしょうかと訳がわからないというように男は赤い瞳を閉じながら呟く。
この男の幼なじみである自分がここへ来たら流れるかのように厭味の一言、二言が必ずあるのに今回はそれがない。

珍しい事もあるものだ、と内心思いながら黙っていつもの席につき話しを聞く。
つかい古されたままのその席は人を感じさせて皇帝の座なんかよりずっと居心地がいい。


「馬鹿なんですよ。本当に」

埒がらあがらない話になにがだと聞くとあの紅い子供がですよ、と冷めた目を向けながら話す。


「生きたい、とそういうんですよ。
…こうなった今ではそれさえも口には出しませんが。
こちらにそれが伝わらないように、と気を張っているようなのですけどね」


バレバレなんですよね〜と軽い口調で幼なじみは言う。
幼なじみの口調と表情に眉を寄せる。
頭が良すぎて自分の感情の表現方法が少々歪な幼なじみはその声が自分の表情と合っていない事に気付いていないらしい。


「綺麗だと…笑うんですよ。
あの子供を贄にするこの世界を。
この世界に勝手に生み出されてやっと生きるという希望を持った時、この世界の《人柱》にされたというのに。」


それなのに本当にどこにも怨みがないかのように笑う。
生きたいと切願しながら諦めているかのように切なく笑う。
馬鹿ですよね、子供は子供らしく辛いと、泣けばいいというのに

そんな事、生まれたばかりの赤ん坊ですら出来る事だというのに

まぁあの子供が泣いたとしても…より多くの人々の未来のために、あの子供を犠牲にするという現実は変わる事はないでしょうが、
それでも…何かを、世界を、うらんだほうが楽になれるというのに。
身勝手な世界を、人柱としてあの子供を捨てた世界を綺麗だ、と笑う。
あまりにもその行動が馬鹿すぎて、愚かすぎて、何故か

「…少々、頭にくるんです。」

まるで泣いているように笑う顔にお前も十分馬鹿だな、と傍聴者は静かに感想をもらした。

(それは『頭にくる』ではなく愛しいからだとわからないのか、
いや、無意識に認めようとしていないのか、
この馬鹿は)

『言いたい事を言えたら楽なのにね。(他の奴らみたいに自分の感情を認めて正直にそれを吐き出せばこいつ自身は楽になるだろうにな)』





(いいたい事をいえたら楽なのにね。お題) 


あきゅろす。
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