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三之助×作兵衛



なんてこった信じられねぇ…!
心底絶望したように作兵衛は呟いた。ついでに両足はかくんと崩れている。まれにみる絶望シーンだろう。
どうしたのかと今まで手をひかれていた三之助は驚く。
手をひかれている、とはいっても別に二人に甘い空気があってこうして手を繋いでいるわけではない。作兵衛は何故か左近と三之助がいるとそうしたがるのだ。もはや癖みたいなものだろうと三之助は思っている。疲れ果てた様子もしくは苛立っている様子でそれでもいつも手は離さずにひいて、三之助にとってはひかれて、いるのだ。
一年のころから続いているそれには一切違和感も感じない。本人達はもちろん周りにも受け入れられているので相当なものだ。まぁその分特別な意味も浮上したりしないが。
何故かいつも通りボロボロになっている作兵衛。それに、普段と変わらず手をひかれていただけなのに何が起こってこんな状態になったのだろうとぼんやり考える。
ぼんやり、考えてまぁ作兵衛の妄想癖は昔からだからな、と原因を探ること自体を放棄した。こういうことは本人に聞いたほうがいいだろう。
作兵衛は自分では常識人だと思っているらしいがアレでけっこう考え方が突飛なのだ。だからこそ今回だって突然こうなったわけだし。こっちがいくら考えても意味がないのだ。

「どうした作、なにか悩み事があるならなんでもいってくれよ。左門なら俺も一緒に捜すしさ。」

己でもわかるような心底心配そうな声をだして少し、驚く。
と、勢いよきちげぇ!という声を作兵衛はあげた。落ち込んでいるにしては勢いがよすぎるな。元気そうでよかった。ぼんやりおもいながらも、いつものことなので気にかけないことにした。
ぶつりぶつりと怒ったように作兵衛は続ける。

「たくっ!なんで俺はこんな年中迷子でしかも無意識で敵を侮るわ、探してやっても無自覚だから感謝なんかしない。むしろ探してやってたとかいうやつを好きなんだ!…………いや、やっぱ気のせいだ!絶対そうに違いねぇ!じゃなきゃ俺はきっと一生こいつの迷子を見捨てられねぇじゃねぇか!!」


作兵衛がべらべらと話すことにただ耳を傾ける。
心底困った、悩んでいるというポーズをとる作兵衛にうむ、と頷いて、言葉の意味を咀嚼する。
ぼんやり咀嚼して咀嚼して、あれ、と思い、なぁ作兵衛、とまだ怒っているのか悩んでいるのか判断のつかない作兵衛に声をかけた。あ?といってこちらを向く作兵衛に三之助は続ける。

「それの、どこが悪いんだ?」

一瞬いった意味がわからなかったのかきょとんとしてから、すぐに真っ赤になって馬鹿野郎!と怒鳴られた。






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