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神様の悪戯(下) 空木様から頂戴いたしました!(JL)




 ジェイドが子供の姿になって数日が経った。
 訝しる医師を拝み倒し、ベルケンドで精密検査を行ったが、それでもジェイドに起こった異変の原因は分からなかった。もとより、医学でどうにかなる問題ではないような気がしていたが、それでも、現時点ではこの他に良い手が思い至らなかったのだ。

「残念だったな」
「ん?」
 その晩、ジェイドは徐に口を開いた。
 ジェイドの、余ったズボンの裾を折り曲げてやる手を止める。顔を上げると、ヘーゼル色の両目と目が合った。この色にも、随分慣れた気がする。
「原因が分からなくて」
 そう言うジェイドの声からも表情からも、感情らしきものは読み取れない。
「そうでもないさ」
 冷えた印象を抱かせる子供の顔を見返して、ルークは笑う。ジェイドの眉が訝しげに寄った。
「こうやって、ジェイドの世話が焼けるなんて、そうないことだしな」
 楽しげに言って、止めていた手を再び動かす。残りズボンの裾も折り上げてしまい、次はシャツの裾に手を伸ばす。
「…自分でできる」
「いいからいいから」
 憮然と言うジェイドの声は無視をする。嫌だったらルークの手を振り払ってでも拒否すればいいのだ。
「思えば今まで、ジェイドに頼りっぱなしだったからさ、これは誰かがくれた良い機会なのかもしれないな」
 いつも、手を差し伸べられるのは自分の方で、それにいつも、甘えていたように思う。だからこれは、恩返しなのだ。
「誰かって?」
「そうだなあ…ローレライとか」
「……」
「……?」
 ふざけたように、しかし若干の本音を込めて言った言葉に、ジェイドは黙り込んだ。てっきり、そんなの存在しない、と馬鹿にしたように言うかと思っていたのに。
「とにかく、今原因が分からなくたっていいんだ」
 シャツの袖も折り終え、肩から落ちるシャツの襟を引き上げてやる。肩までの髪が指に触れて、小さな音をたてた。
「…僕があなたを知らなくてもか」
 さらり、と指をすり抜けていく髪を慈しむ。
「ジェイドがそばにいてくれるなら、それでいいよ」
 形の良い頭を撫でた。ジェイドの頭を撫でるなんて初めてだ。
「どんな姿でも、いいんだ」
 ジェイドの身体を抱き締める。小さな頭も、狭い肩も、すっぽりと腕に収まってしまった。
 いつもとは逆だな、と内心で笑った。
 悲しくはない。ただ、少しだけ寂しかった。

「一緒に寝てもいいんだぞ?」
 夜も更けてベッドに潜り込む頃、ルークは茶化して言ってみた。ジェイドはルークを一瞥して、しかし何も言わずに自分の寝台に潜り込んだ。笑いながら、ルークも寝台に入る。
 背中を向けて身体を丸めたジェイドにおやすみを。
 枕元のランプを消して、すぐにルークも目を閉じた。

 それは、夢だったのか、現実だったのか。足音で目を覚ましたような気がした。
「ねえ、いいことを教えてあげるよ」
 耳元で囁かれた落ち着いた、少し高い声。
「僕は、今夜過去に帰る。35歳のジェイドが、帰ってくる」
 ジェイドが話している。目を開けたいのに、瞼が鉛のように思い。震えるばかりで、少しも持ち上がらなかった。
「この、くだらない遊びも終わる」
 遊び。遊びとは、何の話だ。誰の。
「さようなら、ルーク」
 その声は、少し震えているように聞こえた。
(ジェイド、泣いてる?)
「ありがとう」
 起きないと。ジェイドが泣いているなら。
 小さな手が頬に触れた。酷く冷えた手が。

「……っ」
 毛布を跳ね上げて飛び起きると、空は既に白んでいた。窓から差し込む淡い光で、寝台が薄い影を映し出す。
「あ、さ…?」
 さっきまでは、確かに夜だったのに。
「そうだ、ジェイド……っ」
 慌てて隣の寝台を見遣る。しかしそこはもぬけの殻で。
「っ、何処へ…」
「此処に居ますよ」

 寝台から飛び降りようとすると、部屋の奥から聞き慣れた声が聞こえた。
「服が窮屈でしたので、着替えさせていただきましたよ」
 部屋の奥、シャワー室から、長身の影が現れた。肩よりも長い亜麻色の髪が、朝日を受けて透ける。
「ジェイド……?」
「他の誰に見えます?」
 が懐かしく思えた。ほんの数日、見なかっただけなのに。
「すいません、暫く留守に」
 いつもの軍服で、ロングブーツの踵が高い靴音を立てた。呆然とするルークの前に立って、ジェイドは薄く笑った。
「いいや」
 屈み込むジェイドの、肩から零れた髪に触れた。それは、小さなジェイドと少しも変わらない。
「ジェイドはずっと、俺のそばにいただろ」
 細くて長い、ジェイドの指がルークの頬に触れた。昨夜と同じに、冷えた指だった。

 ほらね、ジェイドはずっと、そばにいた。













◆あとがき
 喜一景さまへ捧げます。
 リクエストは『小さいジェイドと、ジェイドの保護者と言って張り切るルーク』でした。
 まず、実習お疲れ様でした!!更に、長い間サイトに足を運んでくださってありがとうございます。知らないうちに、サイト設立以来くらいのお付き合いなんですね、感動です!!ありがとうございます!!
 さて、小説のお話ですが。空木の文章能力の低さから微妙に脱線し、そして一本に纏めきれずに上下編となってしまいました。すいません。
 ジェイドが小さくなっちゃったのは誰かさんの悪戯です。誰かさんはご想像にお任せですが。
 小さいジェイドさんって、難しいですね。でも、ガッツリ何話か書いてみたいネタでした。
 楽しく書かせていただきました。ありがとうございました!!



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喜一はやりました…!!やりきりました。
ちっちゃいジェイド萌えを自重せず空木さんに書いて頂きました…っ!!
やった!やった!
親バカっぽい誰かの横暴でつれてこられた未来でルークに初恋しちゃった★ジェイドとか…萌えたぎります!!
可愛いよー!
ひそかにちっちゃいジェイドがおっきいジェイドにヤキモチやいてたらいいですよね…自分自身なのにヤキモチとか…萌えたぎりませんか!?(←妄想中
素敵すぎて泣けてきたよ私。
2周年おめでとうございましたー!ありがとうございます!
これからもstkさせていただきます(コラ

空木様のサイトAbendlied-夕べの歌-にはこちらからどうぞ!素敵です
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あきゅろす。
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