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50000hit企画


呆然としたような顔で、令二が俺を見た。
その後ろでは、可愛らしい顔をした男の子が勝ち誇ったような顔でこっちを見ている。

「一樹、いつから…」
「…令二」
「なっ…なんで…違う一樹、違うんだコレは…」
「やめて!!!」

俺は、初めて令二に対して声を荒げた。

言い訳なんて聞きたくない。

目に見えて動揺している令二に俺は言い放つ。

「最低」

令二の顔なんてもう、見たくない。
俺は令二に背を向けると階段を駆け降りた。

「一樹、待って!!一樹!!」

令二の声を無視して、玄関で靴を履くと自分の家に全速力で走る。

「いらっしゃい…って、一樹?どうしたお前」

実家の店内に入ったら、父さんが驚いたように寄ってきた。

「一樹お前、何泣いてやがる…」
「え?…あれ…、おかしい、な…」

いつの間にか俺の両目からは、ボロボロと涙が溢れていた。
堪えきれず、俺は思わず父さんにしがみつく。

「一樹」
「っ…うあ、あああっ…あ」

俺は父さんの胸元に顔を埋めて、声を上げて号泣した。
ごめん、父さん。着物汚しちゃって。すぐに元気になるから。後で沢山謝るから、今だけ許してください。

父さんは何も言わず、俺が落ち着くまで優しく背中を撫でてくれた。それに余計に、涙が止まらなかった。



その翌日は金曜日で、俺は学校を休んだ。もう日曜日になってしまったけど、金曜日、土曜日と自分が何をしていたのか記憶にない。人形みたいに、ただボーッとしていた。

令二が何度も家を訪ねてきたと母さんが言ってた。父さんと母さんには、令二に絶対会いたくないと言っておいた。昔から令二を可愛がっていた母さんは、早く仲直りしなさいよと世話を焼こうとしてきたが、父さんはそんな母さんに「もう高校生なんだから放っておけ」と言ってくれた。

二人とも、俺を思って言ってくれているのが分かって、俺はまた泣きそうになった。

令二からは電話やメールだって何十件も着ている。
どうせ必死に言い訳をしてくるだけだろうと思って携帯は開かない。

…それだけじゃない。俺は怖いんだ。

大好きな令二に、謝られたりしたら…許してくれと言われたら…俺は、どうすれば良いんだろう。
…いや、もしかしたら別れてくれと言われるかもしれない。

…どちらも怖くて堪らない。
現実を受け止めたくなかった。
まだ、俺は令二のことが好きなんだ。

こんなことになるなら、恋人になんてならなきゃ良かった。
なんで俺に告白なんかしてきたの?
ただの、幼なじみのままだったら良かったのに。

…酷いよ令二。こんなに俺が、令二のことを大好きなってから裏切るだなんて…酷すぎる。






「一樹、母さんたち出掛けるから留守番よろしくね」
「はいはい」

今日は和装の結婚式があるらしくて父さんと母さんは衣装を持って、着付けのため出掛ける。
俺はソファーでゴロゴロしながら適当に返事をした。

「そうだ一樹、今日お母さんが頼んだ通販グッズが届くのよ。宅配便来るから出てちょうだい」
「えー…」
「3時頃に来るからお願いね。じゃあ、行ってきます」

めんどくさいなあ…

しばらくテレビを見ていたら、玄関の呼び鈴が鳴った。チラリと時計に目をやると、2時半。
少し早いけど、宅配便だろうと思って俺はモニターの確認もせずに玄関のドアを開いてしまった。

「お待たせし……、え?」
「一樹!やっと出てくれたっ…!!」

ドアの前に居たのは、令二だった。

慌ててドアを閉めようとしたが、足を挟まれて阻止される。

「なっ…やだ、やめて帰って!」
「帰らない!一樹、お願いだから話を聞いて!」
「やだやだやだっ!帰れ!会いたくない!」

しばらく攻防を続けていたが、犬の散歩をして通りかかった近所のオバチャンが訝しげにこっちを見ていたので渋々ドアを開けた。

「…近所迷惑だから、入って」
「お邪魔、します」

それから無言で階段を上がり、俺の部屋に入った瞬間…背後から抱き締められた。

「なっ…!離せ!」
「一樹、一樹っ…、会いたかった…!」

若干パニックになりながら俺は必死に抵抗するが、強く抱き込まれて全く離れられない。

「やめ、離して!」
「一樹、俺は」
「触んないでよ!」

ダメだ、声が震える。
俺を抱き締める令二の力が、少しだけ緩んだ。

「他の、男に触った手で俺に触れないで…!」
「いつ、きっ…」
「汚い手で触るな!」

どん、思い切り令二の胸を押した。
先ほどの強さが嘘かのように、令二の体は簡単に離れた。

「一樹…」
「…!」

令二の瞳から、ほろほろと涙が零れる。

初めて見る泣き顔に、俺の方が動揺してしまう。

なんで…悪いのは令二なのに、なんで泣くんだよ。

「俺は、ただ…一樹を守りたかった…」
「令、二…?」

守る?何の話?
とりあえず令二をベットに座らせて、俺は少し離れて隣に座る。

…そして令二は、今までに無いくらい思い詰めた顔で話し始めた。





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