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50000hit企画
Another(複数×ショタ、トリップファンタジー)

足がすくむ。怖くてたまらない。だけど、あの場所に戻るのはもっと怖くて…きつく目を瞑った俺は、屋上から飛び降りた。



俺はごく普通の高校生男子だった。普通に友人も居たし、地味ながらもそれなりに学校生活を楽しんでいた。

ひとつ変わった所を挙げるとすれば、俺の通っている高校だろうか。

俺の通う高校は今は珍しい私立の男子校で、しかも全寮制。ほぼ閉鎖された空間で年頃の男子たちが24時間一緒に過ごすのだ。
大体予想は付くだろう…性欲や恋心を向ける矛先を、男子に向ける者が自然と多くなる…回りくどい?まあ、簡潔に言うとやたらホモが多いんだよ、うちの学校は。

更に、少し…いやかなり変わった風潮があり、生徒会や風紀等といった役職に付く生徒は、容姿や家柄の良いものから選ばれるというもの。意味わかんないよね。だから、生徒会も風紀も金持ちのイケメンばっかで構成されている。
しかも、彼らにはそれぞれに親衛隊とやらが付いていて、無闇に近付いたりしたら親衛隊の制裁を受けるとか何とか…なんて恐ろしいんだろう。

まあでも、普通に過ごす分には全然大丈夫なんだ。生徒会や風紀、容姿の良い奴らには近付かず、地味に暮らしていれば平和なもんだ。
俺はそうやって、同じ平凡仲間たちと当たり障りなく毎日を過ごし、それなりに学校生活をエンジョイしていたわけだ。

…あいつが来るまでは。

ん?まあ、これを読んでるお姉さま達なら大体予想が付いているのではないか。

そう…この学校に「転校生」がやってきたのだ。

ボサボサの髪(あきらかにカツラ)に瓶底メガネといった秀逸なセンスを持った彼は、たまたま一人部屋だった俺と同じ部屋になった。

これが地獄の始まりだ。

彼は転校してくるなり、生徒会や風紀、不良やスポーツマンと次々に学校のイケメン達を魅了していった。
それだけなら良いんだ。すごいな、モテモテだな、で済む。

ただ、彼は…転校生は、なぜか俺を気に入ったらしく…やたらと俺をつれ回した。生徒会室に行くときも。食堂に行くときも。どこにいくにしても、俺の腕を引っ張って強引に。その力が強いこと強いこと…しかも、断っても話を聞いてくれない。
一度転校生に見付からないように身を隠したときなんかは、泣き叫んで部屋を荒らされまくった。

転校生のことが好きなイケメンたちは、そりゃあ俺のことを良く思わないだろう。彼らは俺のことを「転校生に付きまとっている平凡」とみなして数々の嫌がらせや罵詈雑言を浴びせてきた。

そして、親衛隊のやつらは俺を「転校生を利用して生徒会や風紀に近づいてる」とみなし…毎日のように陰湿なイジメ、時には暴力も振るわれた。

友人たちも、巻き込まれるのを恐れていつしか俺の元から離れていき。
先生も、生徒会の連中が怖くて誰も助けてくれなかった。担任に至っては転校生のファンのひとりだったし。

理不尽な仕打ちに、最初は必死に耐えていた。

辞めたいと何度も思ったが、裕福ではないのに無理をしてやっとの思いでこの学校に入れてくれた両親のことを思うと、簡単に辞めるだなんて出来なかった。

でも、もう駄目だ。駄目なんだ。耐えられない。

思い詰めた俺は、屋上から…飛び降りた。







…なんだ、この感触。温かくて、濡れてて柔らかな感触を頬に感じて俺は目を覚ました。なんか、ぺちゃぺちゃいってる…なにこれ…

そっと目を開けると、そこには

「あ、目え覚ました」
「ぎゃあああぁあああ!!」

ドアップの超絶イケメンが、俺の顔を覗き込んでいた。先ほど違和感を感じた頬に触れると、なんか濡れてた。…舐め、られてた…?

「もぐもぐ」
「ぎゃあああああああ!」

状況が把握できなくてパニックになっていたら、目の前のイケメンが再び顔を寄せ、俺の頬をぱくりと食み、軽く歯を立ててきた。
え!?食われるの!?俺食われる!?

「なんか甘…」
「あんた何なんですか!!俺は食い物じゃありません止めてください!!」

泣きながら叫んだら、ようやく解放された。うう…頬が唾液まみれだ…気持ち悪…

…てゆうか、俺…さっき屋上から飛び降りたよな?

俺、どうなったの?

ここ、どこ?

「おい、お前…」
「ちょ、黙ってて!」

さっきのイケメンが何か言おうとしたのを遮り、俺は状況を整理しようと辺りを見回した。

冷静になって観察して気が付いた。俺が今居る場所はかなり異様な所だ。周りは沢山の木々が生い茂っているのだが、その葉は日の光に当たりキラキラと虹色に輝いている。少し先には川が見えたが、その水は金色だ。

そして、目の前の男。

…なんか、銀色の猫耳、みたいなものが生えている。それから、同じ色をしたふっさふさの尻尾も。つり目がちな瞳の色は宝石のような綺麗な緑色。

なんだこれ。夢か?きっと夢を見てるんだな?
もしくは死後の世界?まさか、ここは天国?

どちらにせよ…ここは、前にいた俺の世界ではなない…気がする。直感的に思った。

「おい」

再びイケメンが話し掛けてきた。

「なんでしょうか」
「お前はなんだ。見たことの無い生き物だ」
「それはこちらのセリフです。その耳何ですか?てゆうか本物?」

夢でも天国でも地獄でも良い。俺の頭がおかしくなっただけかもしれない。もう何だって良いんだ。色々と吹っ切れた俺は、彼の猫耳?に手を伸ばした。

ふにゅ

うわあああ!柔らかい!温かいし!軽く引っ張ってみても取れない。どうやら本物みたいだ。

「無礼者!!」
「ぎゃああごめんなさいごめんなさい!」

大人しくしているから調子にのって触りまくってたら突然怒鳴られた。あ、俺死ぬわ(もう死んでるかもだけど)

「俺を誰だと心得ている!俺はビースト国王の第一王子、シャ「なんだこれえええ!!!!」

イケメンが何か言っているがそれどころじゃない。
ふと自分の体を見下ろすと…俺が…俺の体が…

「縮んでる!?」

学校の制服のサイズが大きくなっている…と思いきや、俺の体が縮んでいるようだ。慌てて立ち上がると、ダボダボのズボンがずり下がりそうになり、押さえながらすぐ近くの川まで走った。
途中裾を踏んづけて転んだが何とか川の横に行き、金に輝く水面を覗き込んだ。

そこに写った自分は…

「子供に、なってる…」

元々童顔ではあったが…更に、子供になっていた。

しかし確かに自分ではある。小学校低学年、とか…そんくらいの時の俺…かな…どうなってんだ…

一気に色んな事が起こりすぎて力が抜け、俺はぐったりとその場で項垂れた。そこに、先ほどのイケメンが近付いてきた。

「お前は何者だ。この世界の者ではないな」
「…この世界、とは?」
「ふざけているのか?」
「ふざけてません!俺は今どうなってるんですか?どうして子供になってるの?てゆうかここどこだよ!あなたは何なんですか!」
「…ここはビースト国だ。お前がどうなったとかは知らん。ただ、森に散歩をしに来たらお前が転がっていたから、食べ物か何かかと思って味見をしていたらお前が目を覚ましたんだ」
「ごめんちょっと意味わかんない…」
「お前は得体がしれないが敵意も無いみたいだし、小さく弱そうだ。それに俺らと少し姿が似ている。新種の珍獣か…?」
「珍獣て」
「興味深いから保護してやろう。ただし、暴れたり変な気を起こしたら駆除をする」

そして俺はこの見知らぬ猫耳イケメンに軽々と抱え上げられ、城のような所に連れてこられた。

「王子…!また勝手に城を抜け出したのですか!!今捜索部隊が駆り出し…ってその生き物はなんですか!!また変なものを拾ってきて!!危険なものだったら」
「あーもう、うるせえな…ほら」

城の門をくぐるなり、真っ赤な兎の耳を付けたこれまたイケメンが駆け寄ってきた。
ん…王子、だと?

すとんと地面に下ろされた途端、色んな動物の耳や尻尾を付けた、軍服のようなものをきた人たちに取り囲まれた。え、何これ怖い…
怯えてぷるぷると震えながら猫耳イケメンの腕をぎゅっと掴むと、庇うように俺の肩を抱き寄せてくれた。

「怖がってんじゃねえか。大丈夫だ、こいつは狂暴な動物じゃない…多分」
「多分って!!ああもう、これだから王子は…!!」
「うるせえ、そんな大声出さなくても聞こえるっつうの。とりあえず城ん中入らせろよ」
「そんな得体の知れない生き物を城内に入れるわけには…!!」
「まあ、いいじゃないか」
「…王様!!?」

また何か新しいやつが出てきた…と思ったら、猫耳イケメンをちょっと大人っぽくしたような優しそうなお兄さんが登場した。

王様、って…
つまり、整理すると…この猫耳イケメンが王子で、このお兄さんが王様…と…

俺、もしかしてとんでもない場所に来てしまったんじゃ…ガクブル

「王様…!何を仰っているんですか!」
「息子がこんなに何かに関心を示しているのは始めて見た。意見を尊重してやりたいんだ。それに私もこの可愛らしい生物に興味があるしね」
「王様!」
「親父もこう言ってんだから良いじゃねえか。ほら、城ん中行くぞ。おい…お前尋常じゃないくらい体震えてんぞ、病気か?」

そうこうして、俺は城の中に連れられ…よくドラクエなんかで見る王の間?みたいな所に来た。
俺は玉座に座った王の前に膝まづき、王子?の猫耳イケメンは俺の横にぴったりとくっついてあぐらをかいて座っている。

「ようこそ。私は国王のアンジェだ。そして君を拾ったのが私の長男の…」
「シャール」
「す…すみません…」
「君はどこから来たんだい?名前はあるの?」
「あ…俺は、あの…日本という国から…名前は山下 陸(やました りく)です」
「ニホン…?聞いたことないな…。リクか、素敵な名前だね」
「すみません…」
「なー親父ー」
「なんだい」
「これ、ペットにして良いー?」

先ほどから…えっと…シャール王子だっけ…にクンクンと首のあたりの匂いを嗅がれていてくすぐったい。
てゆうか…なんか今こいつすげえ物騒なこと言ってなかった?

「そうだね。珍しい生き物だから大切に保護しようか」
「やべーよこいつ、すっげ良い匂いするー。なんか…交尾したい」
「いやだぁああ!!」
「冗談だって(本気だけど)」
「淡白なお前が珍しいな…。生き生きとしたお前を見るのは嬉しいよ。良い勉強にもなるだろう、飼うからには責任を持ちなさい」
「ありがと親父。俺ちゃんと頑張って育てる。あー…他の兄弟に見付かったら面倒だなー、会わせたくねえ」
「きっとみんなも気に入るよ」


夢なのか、天国に来たのか、未だに混乱していてよくわからない。けれど…

前に居た場所よりは、幸せになれそうな予感が…少しだけした。


End




おまけ1


「シャール、とりあえず服を仕立てさせるのはどうかな。今着てる物はサイズが合っていないようだ」
「そうだな。俺好みにドレスアップしてやるよ」
「よ、よろしく…お願いします…」


おまけ2

「シャール王子や王様の猫耳って銀色で綺麗ですよね。兄弟もみんななんですか?」
「あ?猫じゃねえよ。ライオンだろどう見ても!」
「す、すみません…(わかんねえよ!)」


▽あとがき。

他の兄弟と取り合いをしたりとか、主人公をいじめていた奴らもこの世界にトリップしてきて報復に合う…とか色々と思い付いたのです短編じゃ収まりそうに無いので止めました(笑)
続編を検討したいと思います。

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あきゅろす。
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