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50000hit企画
おかしいの(ヤンデレ美形×平凡)


【着信 54件 新着メール61件】

「どうしよう」








昨日、よくお世話になっている親戚のおばさんが倒れたというので、家族でお見舞いに行くために突然家を離れることになった。車で数時間、目的地に着いてからふとケータイを家に忘れてきたことに気付いた。
別に一泊しかしないし良いだろ。そう思ったのも束の間、血の気が引いた。大問題が、ひとつあることを思い出したのだ。


「理人…」


家に帰って来てすぐさまケータイを開くと、案の定とんでもない数の着信履歴と新着メール。頭が痛くなる。しばし画面を見つめて、さてどうしましょうかと悩んでいた時、ケータイが新たな着信を知らせた。一度深呼吸をしてから電話に出る。

『颯真(そうま)!?今どこに居るの!!?どうして電話に出てくれなかったの、メールの返信だって…!家に行っても誰も居ないみたいだし、もしかして、誰かに誘拐されたかも…とか考えちゃって…!』

「ご…ごめん。誘拐なんてそんなバカな…」

『じゃあ…俺のこと、嫌いになっちゃったの?俺のこと避けてるってこと?俺なにか悪いことしたかな?ねえ別れるだなんて言わないで、悪いところがあるなら直すし、颯真の為ならなんだってするから、ねえお願いだから、俺、』

「おばさんが倒れたっつうから少し遠出してただけだ。ケータイは家に忘れただけ。お前の心配していることなんて1つもないよ」

『…今からそっち行っても良い?』

「いや…、俺が」

『嫌なの?やっぱり俺なんかもう要らない?颯真に必要とされないんなら、俺なんてもう死、』

「あーもう!勝手に暴走すんな!人の話は最後まで聞けよ!俺が今からお前ん家行くから大人しく待ってろ」

それだけ言って通話を切った。
やっぱりこんなことになってしまった。まあ、想像は付いてたけど。
大分慣れてしまった俺はおかしいんだろうか?
とりあえず理人の家に向かおう。

…俺と理人は恋人同士だ。何が何だかよくわからないが、高校に入って同じクラスになって…たまたま隣同士の席になって。
それから理人に猛アピールされる日々が始まった。
理人顔がめちゃくちゃ良い。そんなやつに毎日好き好き言われるとその内こっちまで感化されてしまったのだ。
晴れて両思い。めでたしめでたし、ではなかった。

付き合ってみてわかった。
こいつは、かなりおかしい…危ないくらいおかしい奴だということに。


理人が一人暮らししているマンションの前に来たら、理人は寒い中外で待っていた。俺の姿を見付けると嬉しそうに駆け寄ってくるその姿が、まるで飼い主を迎える犬みたいで笑ってしまう。


「そーうまー!!」
「理人」

勢い良く抱き着いてくる理人にふらつきそうになる体をなんとか堪えて、首筋に鼻を埋めて匂いを嗅ぎまくる理人の、緩くおしゃれなパーマのかかった髪を撫でてやる。


「ほんとにほんとに、心配したんだよ。連絡が全然繋がらなくて!部屋の中だって探しまくったんだから!」

瞳を潤ませて睨み付けてくる理人が少し可愛い、と思う時点で俺の頭も相当おかしいんだろう。

…ん?待て。

「部屋?部屋って誰の?」
「もちろん颯真の部屋だよ?」
「え?家、鍵掛け忘れてたっけ?」
「掛かってたよ」
「…鍵持ってるの?」
「合鍵は、付き合う前から作ってるに決まってるでしょ!」

ドヤ顔をする理人が憎らしい。
そうか、これでたまに俺の下着が消えている謎も解明されたわけだ。
驚かないぞ。これくらいで驚かない。今までもっと色んなことされてきたんだから。

「ぶえっくしょーい!」
「わ!颯真大丈夫?ごめんね、寒いよね。中入ろう」

豪快にくしゃみをすれば、理人は慌てて俺の腰を抱いてマンションのエントランスへと促した。
階段を上がり、三階の理人の部屋に着く。

「お邪魔します…」
「ココアでも入れるから」
「あ、漫画読んで良い?」
「良いよー」

8畳ほどのリビングと6畳ほどの寝室がある理人の部屋。高校生の一人暮らしにしては十分すぎる、寧ろ贅沢な広さだろう。
コートをソファーに脱ぎ捨て、漫画を取りに行こうと寝室に向かう。

寝室のドアを開けると…最早見慣れた光景だ。
ベッド脇の、漫画の入った本題の上には写真立てやコルクボードに飾られた俺の写真だらけ。
たまに理人と一緒のやつもあるけど、大体が俺単体だ。
学校で撮られたものや、俺の部屋で撮られたもの、中には理人の部屋のベッドで寝ているものなんかもある。
因みに理人のケータイの待ち受けも俺の写真だ。
俺?愛犬のハリー(ゴールデンレトリバー・3歳のオス)だけど悪いか。

なにやら背表紙に俺の名前が書かれている分厚い写真アルバムは見なかったことにして、目的の漫画本を数冊抜き出して再びリビングに戻った。

テーブルの上にはココアが置いてあり、理人は俺の脱ぎ捨てたコートをきちんとハンガーに掛けてくれている。

「さんきゅ」
「ううん。…颯真おいで」

理人はソファーに腰掛けて、自分の膝をぽんぽんと叩いた。
…まあ、あれだよな。言わんとしてることは解るよ。
ここに座れってことだろ?大丈夫。慣れてるから。

「失礼します」

ゆっくりと理人の膝の上に乗っかった。

けして俺は小柄ではない。ていうか178ある理人とそんなに身長変わんない。絶対重いだろと思う。

「ココアおいしい」
「よかった」
「お腹すいた」
「後で出前でも取ろっか」
「ピザが良い」
「了解。…ねえ颯真、エッチしよ」

べろりとうなじを舐められて、危うくココアを落としそうになった。理人はそんな俺の手からマグカップを取って静かにテーブルに置き、俺の服の中に手を侵入させる。
待て、待て。ピザの話から、何でいきなりこうなったんだ。

「ちょ、理人…!」
「ねえ颯真…あのね」

胸の突起を摘ままれて、思わず声が上擦ってしまう。今まで散々理人に弄られたそこは、既に開発されまくっている。

「うっ…あ…」
「颯真、俺やっぱり颯真が居なきゃダメなんだ。今回でより実感したよ。颯真が居ないと生きていけない」

耳の裏をべろべろ舐められて、甘い顔の作りとは裏腹に低めのその声で囁かれるともう…脳ミソがどろどろに溶かされてしまう。

「ひゃっ…、理人…」
「だからね、颯真、俺から離れようなんて思わないでね」
「…思った、ら…?」

怖い、そう思いながらも期待に声が震えてしまう。

「颯真を殺して、俺も死ぬ」

なあ、俺どんだけ愛されてるの。

この手の台詞には、やっぱりまだ慣れてなくて。未だにドキドキしてしまう。それが恐怖からかトキメキからかはわからない。

けど、こんなことを言われても理人を愛しいと思う俺もやっぱりおかしい奴なんだろう。



end.

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