アーユーマイン?
30
咲人と共に教室に入ると、すぐに瑞希とばっちり視線が交わった。瑞希は俺らがまた一緒に居ることに一瞬だけ驚いたような表情をしたが、すぐに笑みを浮かべて俺達に駆け寄ってきた。こいつには色々と心配をさせてしまった…。そして、これからもきっと沢山迷惑を掛けるだろう。すまん瑞希。
「おっはよー!いやあ、お前ら仲直りしたんだな。良かった良かった!」
「まあ、うん…」
「うん!もうバッチリ」
少しだけ決まり悪く感じた俺が曖昧な返事をすると、咲人が瑞希以上に眩しい笑みを浮かべて機嫌良さげに言いい放つ。ちょっとイラついた。
俺はもう苦笑いを浮かべるしかない。
「かなたん、あーんして」
「…キモい」
「咲人ざまあ、あっ…ごめんなさい殴らないで!」
なんら変わりのない学校生活を取り戻した…と言いたいところだが、ひとつ厄介なことが。
咲人が、やたらと俺にベタベタしてくるようになった。いや、前々からスキンシップ過剰ではあったけどそれ以上に酷くなった。今だって、蕩けるような甘い笑みを浮かべて購買で買った弁当の唐揚げを俺の口元に運ぼうとしたところだ。
これがあの宣言した、咲人なりの「アピール」なのだろうか。正直やめてほしい…。
「かなたんかなたん」
「学校でその呼び方やめてくれ…」
「家なら良いの?じゃあ今日はお持ち帰りしちゃおうかな!」
「…ヤメテ」
瑞希を含めクラスメイトたちは、単にふざけてると思ってるみたいで、女子なんかは「綾瀬くんおもしろーい」とか言ってて、寧ろ咲人の好感度は益々上昇…解せぬ。
まあ…そうじゃないと困るというか…咲人が本当に俺のことが好きだって、知られたらマズイから良いんだけどね…
てか…ううん?
俺がここで変に嫌がったりしたら寧ろ怪しまれるんじゃ?
ただでさえ無愛想というか、つまんない奴…ってキャラ付けられてるのにさ、余計にノリの悪い奴だと思われそうだ…
よし、ちょっとだけふざけてみようかな。
「奏太、今日のパンツ何色ー?」
キモッ…と思いつつ、ここはノってみる。
「黒だよ」
「まじで!?俺もだよ。運命だね」
「ソウダネ」
「俺は青だよー!」
「てめえのパンツなんて聞きたくねえんだよ瑞希。あ、じゃあさ奏太、昨日オナニーした?」
キモォ…でもこうゆうのって、高校生の男子なら普通の会話なのかも…?
「…昨日はしてないよ」
「そうなの?俺はねー、3回もしたよ。するとき奏太の「ウワアアアア!!!」」
何だか知らないけどとてつもなくやばいことを口にしようとした気がしたから慌てて遮った。てか何?俺の何?気になるけど聞きたくない!
「奏太はウブだね、そんな所も可愛い」
「…瑞希、助けて」
「なに俺以外の男頼ってんの!?瑞希コロス」
「俺を巻き込むのやめろよ奏太!こいつ一番敵に回したくないんだから!って、痛いハゲる!」
瑞希の前髪をわし掴んで引っ張っている咲人をみながら、俺は今後を憂い小さくため息を吐いた。
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