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アーユーマイン?
29

夢を見ている。夢の中で、「あ、これは夢だ」と自覚の持てる夢を。

これは確か、夏ごろの記憶だ。
鮮明な映像が蘇ってくる。

その日は瑞希と、咲人と俺とで急に花火をやることになって。でも、瑞希がインフルエンザにかかって遊べなくなってしまった。

咲人と二人で、近くの河川敷に向かった。いつものように咲人の自転車の後ろに乗っかって、風を切る音にかき消されないように大きな声で他愛のない会話を交わしていた。

「奏太ぁ」
「んー?」
「瑞希大丈夫かな」
「後でお見舞い行く?」
「うつったら嫌だよ」
「咲人はバカだから大丈夫だろ!」
「違うよ、バカは奏太でしょ。というか、奏太にうつったら嫌なんだよ」
「はあ?バカじゃねえし!アホ!」

ああ、そういえばこんな会話してたよなあ。
咲人は、いつも俺のことばっか心配してた。小さな怪我をしたり、ちょっと風邪をひいただけでまるで俺が死ぬみたいな反応をして。
変なやつだ。でもすごくすごく、大切にされてるんだなと、俺は良い友達を持ったなとむず痒く思ってた。

河川敷に着いて自転車から降り、二人で花火をした。勢いのある手持ちの花火を振り回したりして走り回って、はしゃぎまくった。バカみたいだった、本当にバカだった。

そうだ。そのあと、はしゃぎ疲れて座り込んで、線香花火を10本ずつくらい束で持って火を点けた。

俺、咲人に言ったんだ。

すげえ楽しいな、俺まじお前と友達で良かったわ。

咲人は何も言わなかったよな。ただ、少し寂しそうに笑っただけ。

何だよ、俺が恥ずかしいこと言ってるみてえだろ!青春っぽいなと思ったのに!

俺がそう言って咲人を肘で小突いたら、咲人は「俺も、奏太に会えて良かった」って笑ってくれた。

懐かしいなあ。

このあとどうなったんだっけ。

意識がぼんやりしてきた。そろそろ夢から醒めるかもしれない。

「奏太、でも俺はね。友達なんかじゃなくて、お前と恋人になりたいんだ」

花火の光に照らされた、綺麗な横顔の咲人が言った。
なんだこれ?こんなの知らない。こんなセリフ、あのときは言ってなかったよね。

「奏太、好きだ」








目を開くと、見慣れた自分の部屋の天井が目に入った。なんか冷たいなと思ってこめかみを手で擦ったら濡れていた。なんでだか俺は涙を流していた。

どうして、こんな夢を見たんだろう。



「あれ、奏太起きてるんだ。珍しいね」
「…咲人」

タイミングが良いのか悪いのか、咲人が部屋に入って来た。俺は慌てて目元をスウェットの袖で拭う。

「おはよう」
「はよ」
「…奏太、泣いてるの?」
「寝起きだから」
「ふーん…」

お前が夢に出てきた、だなんて絶対に言えない。



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あきゅろす。
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