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きっと恋に落ちたから †甘夢
彼氏に振られた



もう人を好きになるのはやめようって



本気で思った



それなのに…





私は今、テニス部の部室でお昼ご飯を食べている。

でも、別にテニス部のマネージャーって訳じゃない。

私の弟がテニス部で、忘れ物を届けたり、練習を見に行ったりするうちにみんなと仲良くなって、一緒にお昼食べるまでになったって訳。

そんな訳で現在に至る。

『はぁ…』

私は振られたことを思い出して、盛大にため息をつく。

「ちゃーさびたが〔どうした〕?ため息なんかついて」

『…彼氏に振られたの』

「じゅんに〔マジで〕!?ぬーんち〔なんで〕?」

好奇の視線を向けてきたのは平古場。

ちくしょう。なんでそんなに楽しそうなんだ。

『…2股かけられてたの。本命の子がいて、私が2人目』

お弁当のおかずを突っつきながら言う。

『食欲出ないよ』

「じゃあ、わんが食ってやるさぁ!」

『いいけど、少し空気読もうよ、田仁志』

「くぬ〔この〕卵焼き、でーじまーさん〔すっごくうまい〕!」

…人の話は最後まで聞け。

まぁ、いいか。所詮田仁志だし(←ひどい)

「付き合ったのいつだったばー?」

焼きそばパンを頬張りながら甲斐が言う。

なんか、アンタの髪って焼きそばみたいね。

…怒るだろうから言わないでおいてやるけど。

『…2ヶ月前』

「思ったより短かったね」

『うるさい、木手』

短かったことくらい、自分でも知ってるっての。

だから考えないようにしてたのにさ。

『…泣きそー』

机に顔を伏せると誰かが頭を撫でてくれた。

少し顔を上げて誰なのか確認すると、それは知念だった。

知念は優しいね。君はいい旦那さんになるよ。

『ありがと』

「泣きたい時は泣いた方がいいさぁ」

『……そだね』

でも、ごめん。

私、人前で泣けないんだ。

そう言おうとおもったけど、その言葉は呑み込んだ。

代わりに、また机に突っ伏した。

「あ、もうこんな時間やっしー!」

「げっ!!確か次移動教室あんに!急ぐぞ、凛!」

「りょーかいっ!」

バタバタって走っていく足音が聞こえたから、甲斐と平古場は授業に向かったんだろう。

「わったーも行かないとな」

「くわっちーさびたん〔ごちそうさま〕」

「……」

人の気配がなくなったから、知念と田仁志と木手も部室を出ていったんだと思う。





『っく…ぅ』

我慢していた涙が流れた。

あの人が本当に大好きだったの。

今までになかったくらい。

この人と結婚したいなって思えるくらい。

…だから、ショックもハンパない。

『…バカみたい』

「本当にね」

『…え!?』

返ってくるはずのない返事に、驚いて顔を上げた。

『な、んで…いるの?さっき授業に行ったんじゃ』

「俺は行ってないよ?ただ、気配は消してたけどね」

『消すなよ』

誰もいないと思ったから泣いてたのに。

私が泣いてる間も傍にいたなんて。

なんたる失態。

「振られてよかったんじゃない?」

『…ケンカ売ってる?』

「いいえ」

『売ってるようにしか聞こえないんだけど』

「売る訳ないでしょう?…まぁ、元彼に感謝はしてるけどね」

『は!?』

「だって、これで堂々と名前に手を出せるじゃない」

『な、に…それ?』

混乱して訳が分からなくなっている私をよそに、木手の顔が近づいてきた。

『んっ…ふぁ(///)』

私の唇に何か暖かいものが触れたと思ったら、するりと舌が入り込んできた。

『木、手ぇっ(///)』

頭がくらくらしてきて、力が抜けてきた。

「…ごちそうさま」

そう言って木手は自分の唇をペロリと舐めた。

「キスしたことは謝らないよ」

『っ(///)』

口をパクパクさせることしか出来ない私の耳元で木手は何かを囁いた。

「…溺れさせてあげますよ」

それだけ言うと木手は部室を去っていった。

『…ずるいよ』

私の呟きは誰にも届くことなく消えていった。





もうだれも好きにならないって思ったの



でも



こんなに胸がドキドキするのは



きっと恋に堕ちたから



ねぇ



もっと貴方に溺れさせて?





END





☆あとがき☆

なんかよく分からない突発ネタ…
諒の思いつくまま書いたらこんな話になりました。
木手さん家の永四郎君はこうやって口説いてきそうだよね。

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あきゅろす。
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