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2人で病めば、怖くない †漣可憐様の相互記念夢(甘?)
わんには、前世ものと思われる記憶があった。



でも、それはひどくぼんやりとしていて、思い出そうにも、何かが足りなくて、思い出せない。



そんなある日、名前に逢った。



身体に電気が走るような衝撃の後、全てを思い出し、理解した。





『「・・・やっと、逢えた」』

これが、互いの口から出た言葉。

そしてそのまま磁石のように引き寄せられ、そのまま人目もはばからず、抱き締めあった。

わったーが理解したのは、そう。

わったーが、前世で1人の人間だったということ。

本来なら、また1人に生まれ変わるはずだったのに、どういう訳か、2人に分かれてしまったこと。

靄がかかっていた前世の記憶が、今は鮮明に思い出すことができる。

「じっくり話したいことがある」

『私も同じこと思ったあんに』

お互いを確信したわったーは、近くにある店へと足を運んだ。





入った店で適当に注文を済ませ、本題へと移る。

「ヤー〔お前〕には、前世の記憶あるば?」

『うん。今までは、ところどころあやふやな感じだったけど、今は鮮明に思い出せるよ?・・・こんなの、初めて』

「わんもさ。前世は男・・・やいぎに?」

『うん。それから、前世での恋人は、平古場でしょ?・・・今まで、彼には特別な何かを感じてたんだけどそれがなんなのかさっぱり分からなかった。でも、今なら分かる』

「恋人だったから、惹かれるんだよな」

『そう!無意識に目で追っちゃう的な!』

その確認を皮切りに、わったーは前世から今に至るまでのいろんなことを話した。





あの出会いをきっかけに、わったーの仲は急激に深まった。

元は1人だったせいか、多くを語らなくても分かりあえる。

考えていることが、全く同じと言えば分かってもらえるだろうか。

しかし、2人に分かれてしまった故に困っていることもある。

それは、本能がお互いを求め合ってしまうことだ。

自分の半身の存在を知ってしまったが故に、今度は名前がいないと息がうまく吸えないような、そんな感覚に陥ってしまうのだ。

そんな感覚を抑えるために、胸に軽く手を当て教室から廊下に出た。

廊下に出た理由は、名前が来るような気がしたから。

そして案の定名前は来た。

『・・・来ちゃった』

「なんとなく、そんな気がしてたさぁ」

そう会話していると、偶然凛が通りかかった。

「…夫婦みたいやっしー、実は付き合ってるんば?」

『ふらー〔バーカ〕、平古場。そんなんじゃないんばーよ』

「そうやし・・・変なこと言うな」

「やしが・・・」

『だって、わったーがしちゅんなのは、平古場やいぎに』

「え・・・」

途端に平古場がわんを不審な目で見てくる。

まぁ、当然の反応なのだが・・・名前め、誤解を招くような言い方しなくてもいいあんに

『・・・なんてね!ゆくし〔嘘〕さぁ!・・・さ、寛、ご飯でも食べに行くさぁ』

わんの気持ちを察した名前がそう切り出す。

さすが、わんの片割れ。

そう思いながら弁当を持ち、廊下を後にした。





『・・・さっきはわっさいびーん〔ごめんね〕』

「?」

『平古場のこと。・・・哀しい話だけど、平古場は覚えてないんだもんね、わったーのこと』

「それが、普通なんさぁ」

『前世では、あんなに愛し合ってて、“来世で生まれ変わっても絶対にあなたのことは忘れないわ”ってあびたん〔言ったの〕に・・・ゆくさー〔嘘つき〕やさ』

ぶぅ、と膨れる名前。

同じことを、わんも思う。

だがそれは、仕方ないことだと思う。

だからせめて、現世でまた巡り逢えて、一緒にダブルスを組めただけでもよしとするべきなのだ。

でも、正直に言うと、今のわんは凛以上に名前惹かれている。

これはきっと、1つに戻りたいという本能の叫びなんだろう。

だが、そう思っているのはわんだけではないかという不安に駆られる。

名前は、やはり凛を求めるのではないかと。

さっきだって、凛を見つめる瞳には慈しみがあった。

わんを見る時とは、違う瞳。

無意識に握り締めた拳は、暖かいものに包まれた。

『寛、手繋ぐよ?』

「あぁ」

昼食は空いている方の手で食べ進めることにして、名前の手を優しく握る。

手と手が触れた瞬間、胸につかえた何かがとれるような感覚になった。

やっと、呼吸が楽になったような、胸が満たされていくような、そんな感じ。

さっき抱いていた不安も、今はもうない。

『・・・1つに戻れたら、いいのにね』

「魂が、戻りたがってるもんな」

だからだろうか、今度は触れた箇所からジワジワと身体に熱が回るような感覚がする。

多分この感じは、欲情する感覚に似ている。

多分、わったーが身体を繋げるのはそう遠くないだろう。

そんなことをぼんやり考えていると、名前が口を開いた。

『正直なこと、言ってもいい?』

「ぬーが?」

『平古場のこと、もちろん好きだけど、それ以上に、寛が好き。離れたくないし、ずっと傍にいたい。この気持ちが前世での片割れだからなのかは分からないけど・・・寛がいないと、私、ダメになっちゃう』

「わんも、同じさ」

わんと全く同じことを考えていた名前に、笑みを溢す。

わんの心配は、杞憂だったのだと心底安心した。

だが、この関係はきっと、依存に近いのだろう。

互いに互いの存在が必要で、わったーは、2人で息をしてると言っても過言ではないだろう。

『こんなこと思うなんて、おかしいのかな?』

「分からん。・・・やしが、もしそれが変なことだったとしても」

そこまで言って、名前の瞳を見つめた。

名前もぼんやりとわんを見上げ、言葉を紡いだ。

「『2人で病めば、怖くない』」

互いにそう言うと同時に、繋いでいた手を引き、名前を腕の中に閉じ込めた。

とてつもない安心感を感じながらわんは名前の首筋に唇を寄せた。





ああ、



くぬまま時間が、止まればいいのに





END



†あとがき†

可憐様からリクエストいただいた知念くんの依存夢………になってるのかしら?
すみません、完全に諒の力不足です。

設定的には、某アクエリオンの兄妹的な。
前世は同じ人間で、現世では2人に別れちゃったよ的な。
そんな特殊設定。
普段絶対書かないであろう設定に手を出したもんだから大やけどだぜ!

…ごめんなさい。
依存するならこんな設定だと書きやすいかなって思ったんです。
もし、万が一、いえ。
億が一にでも気に入っていただけたなら幸いです。

可憐様、相互リンクのお誘いありがとうございました!

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