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罰 †罪続編
もう2度と会うことなどないと思っていた



これは神様の悪戯か



それとも…





「…名前…?」

間違えるはずなんてない。

俺が、名前を見間違える訳がない。

『…ぬーよ〔なによ〕、凛。人をお化けでも見るみたいに…』

「なんで、ココに…?」

俺が東京にいることを、名前は知るはずがない。

ならば、なぜ…?

『ぬーんちって、探しに来たに決まってるあんに?』

「探しに来たって、俺を?」

『うん』

「いや、俺はお前にひどいことs――」

「あんまー〔お母さん〕、わん〔俺〕腹減った!パフェ食べたいやさ!」

『………はぁ。仕方ないやー。凛、ファミレス入っていい?』

「あ、あぁ…」

腹が減ったと訴える子供を見やる。

黒くて長めの髪に少しばかり(いや、かなり?)目付きの悪い目。

正直言って小さい時、それこそ金髪にする前の俺にそっくりだ。

「…まさかな(苦笑)」

頭を軽く振り、浮かんだ想像を振り払う。



それから、教会を出て近くのファミレスに入り、席につき、パフェとアイスコーヒーを2つ注文する。

俺の正面に名前が座り、その隣にガキが座る。

俺の視線は自然とそのガキへと向く。

先程振り払ったばかりの想像が、再び浮かんでくる。

果たして、聞いていいことなのだろうか?

悶々と考えても埒があかないと思った俺は、名前の名前を呼んだ。

「………名前」

『ぬぅ?凛?』

「…まさかとは思うが、そのガキって、その…もしかして、もしかすると…俺、の…?」

『うん。私たちの子だよ?蓮(れん)っていうの。ホラ蓮、ヤー〔あんた〕のスー〔お父さん〕あんに、挨拶しなさい』

「名字蓮あんに!」

「…ハァァ!?」

2人とも、さも当たり前のことのことのように言うもんだから、間の抜けた声を出してしまった。

いや、だって、普通に考えておかしいだろ!?

だって、俺は、嫌がる名前を襲って無理矢理行為に及んだんだ。

その時にデキた子なら、普通は堕ろす…だろ?

「………………んで」

『え?』

「なんで、堕ろさなかったんだよ?…その、無理矢理された…訳、だし」

罰が悪くて視線を逸らす。

「あんまー、ぬぅの話ば?」

話の内容が理解できないからだろう。

蓮とかいうガキは不思議そうに名前を見上げていた。

『ん?蓮にはまだ分からなくていいさぁ。ホラ、早くパフェ食べないと、あんまーが食べちゃうよ?』

「だ、だめさぁ!!」

慌ててパフェを食べ始めた蓮とかいうガキ。

多分、パフェに集中してこちらの話はもう聞こえてないだろう。

そう思ったのか、名前が再び口を開いた。

『…寛がね、言ったの』

「知念が?」

『“平古場は、やーぬくとぅ〔お前のこと〕しちゅん〔好き〕だったさぁ”って………』

「…余計なことを」

ってか、なんで知ってるんだ。

俺は、名前を好きなことは誰にも言わず、胸の中に秘めておいたはずだ。

『私、凛の気持ちも知らないで彼氏できたって無神経なこと言っちゃったあんに?…そりゃ、無理矢理襲われたことは許せないけど、凛を傷付けちゃったのは私な訳で………でも、ちゃんと話がしたくても凛は姿を消してて………』

そこまで話して、名前はチラリと隣のガキを見て言葉を続けた。

『この子がお腹の中にいるって分かった時ね、神様が凛を探すチャンスをくれたんだと思ったの。だから、周りの反対もあったけど、産むって決めたの』

「……………」

『で、また会えた』

視線を俺に戻し、にっこりと笑う。

その表情は昔俺が好きだった表情のままで、胸が締め付けられた。

何を言えばいいのか分からなくて、俺はアイスコーヒーに口を付ける。

そんな俺に、今度は名前が話し掛けた。

『ね、今までどうやって生活してたんば?』

「………ホストやって、とりあえず生きてた」

『クスッ…裕次郎の言った通りさ(笑)』

未だクスクスと笑い続ける名前を見つめる。

本当は、もっと違う話をしたいように感じられたから。

その辺を察せられる辺り、俺もまだ名前のことが好きなんだな、なんてぼんやり思った。

「………で、本題は?」

俺がそう切り出すと、名前は笑うのをやめ、真面目な顔になって言った。

『………一緒にうちなーに帰ろう?凛』

「…………は?」

随分と素っ頓狂な声が出てしまったが、この際触れないでおく。

「お前、何言ってんだ!?」

『ぬぅって…聞こえなかった?一緒にうちなーに帰ろうって言ったんばーよ』

「っ!聞こえてない訳じゃねーよ!」

いきなり怒鳴り声を上げた俺に周りの視線が集まる。

八つ当たりかもしれないが、周りの奴らを睨み返すと皆あからさまに目線を逸らした。

そんな中、名前と隣に座るガキだけが真っ直ぐ俺を見つめていた。

「な、なんだよ…」

『凛は、うちなーに帰りたくないんば?』

「…そうじゃなくて。…お前にあんなことした俺が、どの面下げて帰れって言うんだよ…」

『私は、ね』

目線を下げ、名前は言葉を続けた。

『凛のしたこと、許すことはできないさぁ。でも、それは蓮には関係あんに?だから…』

名前は俺の手とガキの手を取り、自分のそれで包み込んだ。

『今から、また始めよう?』

「………っ」

『それが、凛の罰』

にっこりと微笑む名前に、不覚にも涙が零れた。





俺が昔犯した罪



それを償う罰は



あまりにも



優しすぎる罰だった





END






†あとがき†

以前リクエストをいただいたかすみ様の平古場夢。
勝手に続編書いちゃました(笑)
本編を書いてる時から続編書きたいなーって思ってて、少しずつ書いてたのですが、なかなか思うように話が進まず、こんな感じになりました(;^_^A

とりあえず子供を出したかったんだけど、何歳くらいの設定とかは未定(笑)
ただ、凛の子供なんだから、名前は似てるのがいいな…
とか考えた結果、蓮になりました。
ら行で1番しっくりきたのが蓮だったってゆー(笑)
まぁ、そんなこんなでこの作品は完成した訳っす。

でも、長年じーっくり温めてきた作品なので、誰かに気に入ってもらえたら嬉しいです。
あわよくば、当時リクエストしていただいたかすみ様に読んでもらえたらなーなんて思っております。


もし感想等ありましたら、掲示板にお願いいたします。


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