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初恋は叶わない †ナガレ様リク(真田切)
突然だけど、私には好きな人がいます。

名前は真田弦一郎というらしい。

ただ、残念なことに、私と真田さん(彼の場合、君付けよりさん付けのがしっくりくる)は幼馴染でもなければ、隣の席でもないし、ましてやクラスメイトでもない。

強いていうなら、委員会が一緒ということぐらい。

ただ、その委員会でも、話したことすらないのが玉にキズなんだけど。

では、そんな接点のない人をなぜ好きになったのか、その理由を説明することにします。





あれは、私が図書室で本を読むのに夢中になっていたときのこと。

ふと気付けば外は真っ暗で時計を見ると7時を回っていた。

本を元の位置に戻し、慌てて昇降口へと向かい、靴を履き替えた。

そして、自転車を取りに行こうとした時、ボールを打つ音が聞こえたのだ。

いつもは気にも留めないものの、その日はなぜか気になり、音のする方へと足を進めたのだった。





辿り着いたのはテニスコートだった。

真田弦一郎とは、ここで出会った。

いや、言葉を交わした訳ではないから、実際には見かけた、という表現が正しいのかもしれない。

とにかく、そこで初めて、真田弦一郎という人物を認識した。

節電を意識してだろうか?

彼は、必要最小限の照明の中で、必死にボールを打ち続けていた。

そのひたむきな姿に、目を奪われた。

ラケットを振る度に躍動する筋肉の動き一つ一つが、スローモーションに見えた。

飛び散る汗ですら、光の結晶のようにきれいに見えた。





どのくらい見入っていただろう?

それはたった1分だったかもしれないし、あるいは5分だったかもしれない。

でも、私には1時間とも思えるくらい長く感じた。

はっと我に返った私は、彼に気づかれないよう家路へと着いた。

彼の邪魔をしてはいけない、そんな風に思ったからだ。





次の日、私は学校に着くなり、親友の姿を探した。

彼女は、新聞部に所属し、この学校の生徒のことなら誰でも知っていると自負していた。

それに対し、私は他人にあまり興味がない。

だから、今回はその力を拝借しようと思ったのだ。

『おはよう、ちょっと聞きたいことがあるんだけどいい?』

「名前がそんなこというなんて珍しいね・・・どうしたの?」

『テニス部で、黒い帽子を被った人がいると思うんだけど、その人が誰だか分かる?』

「黒い帽子って言うと…真田弦一郎のことかな?」

『真田弦一郎……?』

「うん。んーと…あ、今ちょうど朝練中じゃん!あの、帽子被った人で間違いなんでしょ?」

『あ、うん。多分あの人』

「あの人は真田弦一郎。テニス部の副部長で、自分にも他人にもすごく厳しいって有名だよ?まあ、あんたは興味ないだろうから知らなかっただろうけど」

そこからは、親友の話はあまり耳に入らなかった。

またしても、彼に魅入ってしまったから。

『真田、弦一郎・・・』

今知ったばかりの名前を口にする。

そうすると、なんだか昔から知っているような気持ちになって、なんだかくすぐったかった。





そんなこんなで、現在に至る訳。

ちなみに、今は親友と教室でお昼を食べている最中。

「で、名前は真田のこと好きなの?」

『ぶっ!!』

あまりにも直球な質問がきたものだから、思わず吹き出してしまった。

「まー、今の反応と行動を見てれば分かるけど?」

あんた分かりやすすぎ、と付けたしながら、彼女は紙パックのジュースを啜った。

『多分、好きなんだと思う。・・・けど・・・』

「けど?」

『別に付き合いたいって思う訳じゃなくて・・・むしろその逆っていうか・・・』

「と、いうと?」

『テニスに夢中な真田が好きなんであって、それを理由に振られたいってゆーか・・・』

「なにそれ?」

『うん。私にもよく分からない』

「普通、好きなんだったら付き合いたいとか彼女になりたいとか思うもんなんだけどねえ…」

『私もそう思うけど…違うんだよなぁ』

「そもそも、振られたいってのがわからないのよね」

『いやー、でも、振られたいんだよね…分からん』

「振られたいんだったら、ぱぱっと告白でもしちゃえばいんじゃね?そうすればすっきり・・・するんじゃね?」

卵焼きを頬張りながら、彼女は言った。

『うーん………』

それとは対照的に食の進まない私はお弁当の中身を箸で突きながら返事を返した。





あれから数日。

親友に言われた、告白という言葉が頭の中をグルグルと回っていた。

『ってか、どうせ振られるんだったら、そもそも告白しなくていいんじゃない?私のエゴに付き合わせるのも申し訳ないし………』

そんな自問自答を繰り返し、告白はしないという答えを導きだしたはずだったのだが・・・





ある日、委員会の時、初めて彼と隣の席になった。

たかだか隣の席に座っただけだというのに心臓はバクバク、顔もゆでダコのように赤くなるのが分かった。

『(お、落ち着け自分!)』

その瞬間に、私が彼に恋心を抱いているのだと実感させられた。

そうだ。

でなければ、普段冷静(に見られる)な私が取り乱す訳がない。

気づいてしまった気持ちに色々言い訳をしていると、彼に話しかけられた。

「具合が悪そうに見えるが大丈夫か?」

『っあ、うん。全然大丈夫・・・です』

「ならよいのだが・・・」

『(話しかけられた!ってか、心配されてしまった!)』

再び心拍数が上がる。

と、同時に湧き上がる気持ち。

『(もし告白するなら、きっと今日を逃したらもうチャンスはない)』

告白はしないと決めたはずなのに、なぜかそんなことを思ってしまった。

これが女の勘というやつだろうか?

そうだとすれば、今回はその女の勘とやらを信じ、この委員会が終わったら、彼に気持を伝えよう。

結果は気にしなくていい分、少しは気が楽だった。





私が悶々としているうちに、委員会は終わり、みんな移動を始めていた。

『あのっ!』

そう口を開いたのはいいものの、彼はまさか私に話しかけられるとは思っていなかったであろう。

その証拠に、私の声に気付かず廊下へと出て行ってしまった。

『(やばっ!)』

慌てて彼の跡を追う。

と、思っていたより遠くにはいなかったようで、危うくぶつかりそうになった。

『あ、あのっっ!』

さっきよりも幾分大きな声を出して話しかける。

「先ほどの…なにか用か?」

『私、真田さんのこと、好きです!でも、別に付き合いたいとかそんなこと思ってる訳じゃなくて…なんてゆーか、その…』

ちらり、と彼の顔を見ると少し困ったような表情をしていた。

「申し訳ないが、今俺は全国大会で優勝することしか頭にない。恋愛などという、くだらないことをしている暇はないのだ」

きっぱりと、彼は言った。

私が言われたいと思っていたことをそのまま言われ、なんだか笑いそうになっつしまったが、なんとか我慢した。

さすがは私が好きになった人、というところだろうか。

もちろん、フラれてしまったことに多少のショックはあったが、彼が自分の気持ちをきっぱりと伝えてくれた分、私もきっぱりと自分の気持ちを伝えなくちゃいけないと思った。

『私は、テニスのことしか頭にない真田さんが好きになったんだと思います。だから、恋愛とか他のことを気にしてる真田さんには、きっと惹かれなかったと思う。だから、これからも、ずっとテニスバカでいて………下さい。あたしが好きでいられるように』

「!・・・・・・無論だ」

一瞬驚いたような顔をしたあと不敵に笑い、彼は背を向けて去って行った。

残された私はというと、彼の不敵な笑みに赤面するばかりだった。





初恋は叶わない

(だから、この恋は決してバッドエンドなんかじゃない
いつか、絶対モノにしてみせる)






END





†あとがき†

リクエストして下さったKことナガレ様へ捧げます。
凄く頑張ったのですが、こんな駄作しか浮かびませんでした(;^_^A
真田難しいよ真田………
ナガレ様のみ、苦情受け付けます。
えぇ、謹んでお受け致します。

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あきゅろす。
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