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振り解けないキミの体温 †お題サイトより(ブン太視点切夢)
名前は、俺が名前のことを都合のいい女だと思っているに違いない。

たまたまそーゆー雰囲気になって身体を重ねてしまって以来、セフレみたいな関係が続いていたから。

いや、“みたい”じゃなくて“そう”なんだけど。

でも、本当は違うんだ。





確かに、最初は遊びのつもりだった。

俺に彼女がいるのを知ってるくせに、関係を持ちたいと言い出した名前。

その頃の俺は、性欲に身を任せ、身体だけの関係の女をたくさん作っていた。

だから、2つ返事でOKを出した。

セフレが1人増えるだけ。

そう、思っていたんだ。





でも、名前は他の女と少し違った。

1番になりたいと言う訳でもなく、他の女と縁を切れと言う訳でもなく。

俺が呼び出すとなぜか嬉しそうにしていたし、行為の最中も幸せそうに笑っていた。

行為の途中で本命の彼女に呼び出された時も、名前は寂しそうに笑うだけで快く送り出してくれた(他の女だと激怒して後始末が大変なのだが)

そんな、他の女と違うことが、妙に気になっていた。

ぶっちゃけると、本命の彼女のことよりも、名前のことを考えている時間の方が長くなっていたような気がする。

それが恋だと気付いたのは少し経ってからだったけど、俺は名前との距離を変えることができなかった。

だって、そうだろぃ?

あれだけ浮気しまくって、本命の彼女さえ蔑ろ(ないがしろ)にしている俺なんだ。

いまさら、どの面下げて“好き”だって言えるんだ?

いくら俺が本気だと伝えたところで、信じてもらえるはずがない。

なにより、それを伝えたことで、名前との関係が変わってしまうことを、恐れた。

もし、だ。

もし仮に名前が彼女になってくれたとしても、いつか別れてしまう日が来るかもしれない。

名前が好きだと気付いた今、そんな未来が怖くてしょうがないんだ。

でも。

今の距離感なら付かず離れずで好きなだけ名前といられる。

名前がセフレをやめよう、と言うまで身体だけでも繋がっていられる。

それでいいじゃないか。

そんな卑怯なことしか考えられない俺は、地獄にでも落ちてしまえばいいんだ。





そんなことを毎日のように考えていたある日。

本命の彼女も、俺が名前のことばっか考えていることに気付いたんだろう。

平手打ちと共に別れを告げられた。

正直、フラれたという事実よりも、名前に慰めてもらえる口実ができたことの方を喜んでいた。

携帯を開き、名前へのメールを打つ。

フラれたという事実と慰めて欲しい旨を簡単に記載し、放課後に俺の家に来るよう付け足し、送信した。

そして俺は、名前に会えるというワクワク感を押し殺して放課後を待った。





授業が終わり、急いで自宅へと帰る。

家への曲がり角を曲がった途端、名前の姿が目に飛び込んできた。

嬉しくてニヤけそうになる顔を隠し、2人で家に入り、俺の部屋へと向かった。

久々に会ったせいか、何を話していいか分からなかった。

だから、一緒にいるのに身体を重ねる訳でもなく。

かといって言葉を交わす訳でもなく。

ただただ、2人で寄り添っていた。

ホントの恋人同士みたいだな、なんてぼんやり思っていると、名前が口を開いた。

『…ねぇ、どうしたの?』

「…なにがだよぃ?」

平静を装って、返事をする。

『今日のブン太、変だよ?』

「は?」

『いつもなら、もうヤってるじゃない?』

「なんだよ、いつもそれしかしてないみたいな…」

『だって、そうじゃない』

「…お前なぁ…」

やっぱり、そう思われていたのか。

がっくりとうなだれながら、何か会話をするために言葉を続けた。

「俺さ、今日、彼女にフられたって言ったじゃん?」

『…うん』

「…なんでフラれちまったと思う?」

何でもいいから話さなくちゃって思ったけど、話題のチョイスを間違った気がする。

その証拠に名前が小さくため息をついた。

あぁ、俺の馬鹿野郎。

一気に自信を消失した俺は、弱々しく呟いた。

「…なぁ」

『なに?』

「…名前は、俺から離れていかないだろぃ?」

『………………う、ん』

俺の卑怯な問いかけにうつむき加減で答える名前。

なんだか、胸が締め付けられるようだった。

表情は見えないけれど、きっとまた、寂しそうに笑っているに違いない。

ここで、本当は名前が好きなんだと言えたらどんなに楽なんだろう。

でも、俺にはそんな資格がない。

だから、せめて。

さり気なくでいいから、言わせてくれ。

「ありがと。俺、名前のそーゆーとこ、好き」

名前が好きだと言ってくれた笑顔でそう言い、そっと名前抱き締めた。







(弱虫な俺を、どうか許して)





END





†あとがき†

千歩様のお題夢のブン太視点で書いてみました。
当初の予定では、ブン太を悪い奴にしようと思って書いていたのですが、結果的にはかなり切ない話になってしまいました。
実は2人とも両想いなのに、お互いそれに気付かない。
気付かないまま今後も微妙な距離感を保って行くんでしょう…

就職先も無事に決まり、復帰作ということになりますが、相互リンクをしてくれた夜兎池雅巳様に捧げたいと思います。
こんなので良かったら、もらってやってくださいませ。

ここまで読んでくださった名前様も、ありがとうございました。
感想等ございましたら、掲示板かメールにてお願いいたします。



千歩様のお題サイトへはこちら→http://59.xmbs.jp/suicideslovestory/?guid=on

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