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恋物語 †一花様リク(甘夢)
ねぇ、覚えてる?



あなたとわたしが



あの日交わした約束を





『遅くなってごめんねー、授業始めるよー』

私、名字名前は比嘉中で教師をやっている。

といっても、つい最近転勤してきたばかりなので右も左も分からない状態。

「先生ー、遅いさぁ。ぬーがらあいびーたん〔何かあったの〕?」

『ぬ、ぬーがら?何??』

「あー、本土の先生はやりにくいやー」

『ご、ごめんね…』

ぶっちゃけた話、一番の壁は言語だったりする。

沖縄弁ってのが、私にはさっぱり分からない。

と、いうかなんでみんな分かるんだろう…

「先生、“ぬーがらあいびーたん?”は、“何かあった?”っていう意味さぁ」

『そうなの?…難しいわね』

一番前の席の男の子。

えっと、確か名前は知念君。

うん。

その子が教えてくれた。

この子は凄くいい子で、転勤初日から私を助けてくれている。

山の様に積み重なっているプリントを運ぶのを手伝ってくれたり

今みたいに沖縄弁を教えてくれたり

本当に、いい子。

でも、最近困ったことがあるの。

知念君が色々手伝ってくれるのは嬉しいんだけど、

知念君が傍にいると、私の心臓がうるさくなる。

えっと…つまり、恋?

女っていう生き物は、優しくされると弱いっていうけど、まさか私にも当てはまるなんて。

でも、この恋は許されるものではない。

だって、私は先生であっちは生徒な訳だし。

そんな恋、許される訳がない。

そう思って、この気持ちには蓋をした。





そうして、自分の思いを偽って、教師を続けてきた。

相変わらず、知念君は優しくて、もっと遅くに生まれて来るんだったな…

なんて、少しばかり親を怨んでみたりした。





気が付けば、桜の蕾が綻び始める季節になっていた。

私が転勤してから、ちょうど一年。

いろんなことがあったなぁ…

「名前ちゃん、感傷に浸ってる場合じゃないんどー?」

『あぁ、ごめんごめん。みんな卒業なのかーって思ったら、感慨深くてね』

この一年で、最初は嫌われてたクラスの生徒とも随分仲良くなった。

今じゃ名前ちゃん、なんて呼ばれるくらい。

「そんなんだと、次受け持つ奴等にナメられるんどー」

『そうね。君たちは随分私をナメてかかってたものね』

「今じゃいい思い出あんに?」

『そうね。…さ、お話はこのくらいにして帰りなさい?』

「そうだね。…バイバイ、先生」

『バイバイ。いつでも遊びに来てね?』

受け持ちの生徒を校門まで見送り、彼女たちが再びこの校門をくぐることがないことに寂しさを感じた。

『…みんな巣立って行くんだね』

かつての自分がそうだったように。

みんな、それぞれの道に進んで行くんだ。

そんなことを考えていると、誰かに声をかけられた。

「先生」

声をする方を見ると、そこにいたのは知念君だった。

『知念君?どうしたの?忘れ物?』

「先生に、渡したい物があって」

『なぁに?』

「…コレ」

知念君が手を差し出す。

そこにあったのは、ボタン。

『コレって、制服のボタンじゃない?ファンの子にあげなかったの?』

欲しい人もたくさんいただろうに

そう付け足すと、知念君は頭をポリポリ掻いて言った。

「わんは、先生にもらってほしかったんさぁ」

『え…?』

その瞬間、強い風が吹き抜け、桜の花びらを散らせる。

「…今はまだ言わないさ。3年後の今日、この場所で必ず言います。だから、それまで待ってて下さい。」

『3年後?…転勤なきゃいいけど』

「…約束あんに?」

そういって小指を絡めた知念君は、なんだかひどく大人びて見えた。





あの日から月日は流れて。

今日で四回目の卒業式。

約束した日から、ちょうど三年。

三年も前にした約束なんて、もう時効かもしれないな

なんて思うけど、私の足はあの場所へと向かっていた。

『今年も綺麗に咲いたね』

桜の木を撫でながら呟く。

無駄に携帯を開いてみたり、キョロキョロしたり…

でも、待てど暮らせど知念君は来なかった。

『…やっぱり時効、か…』

心臓がチクリと傷んだ。

帰ろうと思ってその場を離れようとした時

あの時と同じように、強い風が吹き抜ける。

同時に聞こえた、声。

「…先生」

『ち、ねん…君?』

そこにいたのは、三年前約束を交わした知念君の姿。

すっかり大人っぽくなっていたけど、すぐに分かった。

「覚えていてくれたんですね」

『当たり前でしょ?』

「…その、えっと…」

頭をポリポリとかきながら、凄く言いにくそうに口を開く。

「あの頃はまだ、わんもガキだったから言わなかったんですけど…」

『うん?何?』

「ずっと、好きでした」

『ぇ?』

「それで…良かったら、わんと、結婚を前提に付き合って下さい」

あの頃の、知念君に抱いていた気持ちが一気に蘇る。

『えっと、それは…』

「卒業してから今まで、先生を忘れたことなんてなかったさぁ」

『あの、気持ちはすごく嬉しいけど、その…』

「“その”…?」

『私なんかでいいの?…だって、知念君からみたらすごく年上な訳だし、それに――』

「わんは、年なんて気にしないさぁ。先生が好きだから、一緒にいたいって思った。…それじゃだめなんば?」

ああもう。

いつの間にそんな口説き文句を覚えて来たの?

否定しようにも、こんな赤い顔じゃ意味ないじゃない。

もう、私の負け。

『…だめ、じゃない(///)』

「付き合ってくれるんば?」

『…うん。それにね…?私だって、この4年間知念君のこと忘れたことないんだから』

そう言って携帯のストラップを見せた。

「それ…」

『知念君からもらったボタン。ストラップにしたんだ』

「…あの頃は、それくらいしか思い付かなかったんばーよ(///)」

そう言って照れたように笑った顔は、昔のままだった。





4年ごしに実った恋



これが私の



恋物語





END



☆あとがき☆

一花様よりリクエストいただいた知念夢です。
先生と生徒の恋ということのは難しかったのですが、諒なりに頑張ってみました。
月日の流れがありえないくらい早い上に、とんでもない駄文となってますね(;^_^A
こんな駄文ですが、もらっていただけたら幸いでございますm(__)m

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