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手紙 †死ネタ
今思えばわったー〔俺達〕の出会いは不思議だった。



わん〔俺〕はペットのオウムが逃げて、探している最中で。



やー〔お前〕はオウムを肩に乗せて歌を歌っていた。





「やー…」

わんが話しかけると少し驚いた顔をして言った

『もしかしてこの子の飼い主?』

「あぁ」

話し方からうちなーんちゅ〔沖縄人〕でないことはすぐに分かった。

『良かったね、飼い主が見つかって』

そう言って微笑む姿がでーじちゅら〔とても綺麗〕で、わんは見とれていた。

「やー、家近くなんば?」

『ううん。私、あの病院に入院してるんだ』

指差す方を見る。

あぁ、あの病院か。

何回か行ったことがある。

「何の病気ばぁ?」

『よく分からない。でも、不治の病なんだって』

聞いてはいけないことだったのかもしれない。

そう思ってわんは俯いた。

『あなた、名前は?』

「…知念寛」

『私は名字名前。良かったらこれから私の病室に来ない?』

断る理由なんてなかったから、わったーは病室へと向かった。

『私が歌ってたらこの子が飛んで来たの。びっくりしちゃった!』

「くぬひゃー〔こいつ〕、あまり人になつかないんだけどな」

他愛のない会話をたくさんした。





『私、鳥になりたいんだ』

ぽつりと呟く

「ぬーが〔何で〕?」

『自由だから』

「やーは自由じゃないんばー?」

『だって病院に縛られてるもの。もっと自由に外の景色を見てみたいの』

名前があまりにも寂しそうに言うから。

思わず抱きしめてしまった。

『ち、知念君!?』

「…やーの分までわんが外の景色を見て、伝えてやるさぁ」

『…ありがとう』

この日はそんな会話をしてわんは家に帰った。





あの日からわんは暇さえあれば名前の病院に行くようになった。

『知念君は、部活とかやってるの?』

「テニス部ばぁ」

『楽しそうだね』

「…いつも主将にゴーヤーで脅されてるさぁ」

名前と過ごす、この時間が大好きだった。

「…そろそろ帰るさぁ」

『またね』

病室を出て少し歩くと看護師さんに呼び止められた。

「あなた、名字さんと仲良いのかしら?」

無言で頷く。

「そう。あの子ね、実は……」

自分の耳を疑った。

看護師さんに言われたのは、

「名字さんはね、もぅ永くないの」

と言う言葉だった。

あんなに元気そうなのに?

あんなに綺麗な声で歌うのに?

嘘だと思いたかった





その日は胸騒ぎがした。

この前換えたばかりのガットが切れたから、余計に。

頭をよぎったのは名前のこと。

「どこに行くんですか?」

木手の声なんてわんには聞こえない。

早く名前の所へ行かなければ。

わんの気のせいであってほしい。

そう願って――





着いた先は病院。

急いで病室へ向かい、ガラッとドアを開ける。

そこにいたのは…

静かに眠っている名前と、泣きじゃくっている彼女の両親。

「名前?」

名前を呼ぶが名前は動かない。

ナゼ…?

ドウシテ…?

「君が知念君かい?。娘がいつも話していた。私に外の景色を見せてくれたと…」

認めたくないが、会話の流れで分かってしまった。

名前が死んでしまったこと。

「君への手紙を預かっていた」

彼女の父親から手紙を受け取り、読む。

痛みに耐えながら書いたんだろう。

字が少し崩れている。





――知念君へ

この手紙を読んでいるってことは私はもうこの世界にいないんだろうね。

私ね、知念君が外の景色を見せてくれるって言ってくれた時、すっごく嬉しかったんだ。

色のない私の世界に、何色もの色が飛び込んで来たみたいだった。

今更だけど、私、知念君にちゃんとお礼、言ってなかったよね?

ありがとう、知念君。

短い間だったけど、本当に楽しかったよ。


        名前


読み終えたら、自然と涙が零れた。

でも、わんが泣いたらやーが悲しむ気がして必死にこらえた。





…痛くなかったか?

…苦しくなかったか?

…どうしてわんが行くまで待ってくれなかったんばー?

そんなことばかり考えていた。





名前の葬式が終わり、自分の部屋の窓からぼーっと空を眺める。

やーは鳥になりたいって言ってたな。

鳥にはなれたか?

世界は綺麗ばぁ?

もう一度、やーに会いたい。

声が聞きたい。

やーは今ドコにいる??

空にいるんばー?

だったら伝えられなかった言葉を手紙にしてやーに送ろう。





――名前へ

わんに挨拶もなしにいなくなるのは狡いさぁ。

話してないこと、一杯あったのに。

まだやーに外の景色、伝えてないのに。

やーはわんにありがとうって言ってたけど、わんだってやーに感謝してるさぁ。

やーのおかげで、わんは幸せだった。

わんは口下手だから言えなかったけど、1番やーに言いたかったこと、書いてみるさぁ。


…かなさん〔愛してる〕


        知念寛


手紙を畳んで、オウムの足に結びつける。

「しっかり名前に届けれよ」

オウムは空へと飛んで行く。

願わくばやーに手紙が届きますように…





END




☆あとがき☆

知念君ってオウム飼ってそう…っていう諒のイメージから生まれた夢です。
ファンブックの情報を完全無視した作品でもあります(;^_^A
なんか、いろいろすみません…

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あきゅろす。
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