[携帯モード] [URL送信]


リングの理由 †甘夢
人と付き合うと色々と悩み事が尽きぬもの。



ここ、沖縄比嘉中にも悩める男が一人。





「最近名前に避けられてる気がするさぁ。凛、何か知らねー?」

「わん〔俺〕に聞くなょ。やー〔お前〕の胸に聞いてみろよ」

平古場に言われ、甲斐は胸に手を当て真剣な顔で考える。

「やっぱ何も思い付かないさぁ。凛ー(泣)」

「うるさいな。名前に聞いてくればいいんだろ」

そういい平古場は面倒臭そうに席を立ち、名前のクラスへと向かう。





名前の教室。

平古場が名前のもとへ行くと名前は机に突っ伏していた。

「名前、具合でも悪いのか?」

『凛?いーや具合悪い訳ではないさぁ』

平古場の声を聞き名前は顔を上げる。

「どーしたんばー?」

『聞いてくれるの?』

「まーな。幼なじみやっしー聞いてやるさぁ」

『あのね、裕次郎って本当に私のコト好きなのかなぁって思って』

「裕次郎はやーのコトめちゃくちゃ好きだと思うけど」

『だってさ、裕次郎って誰にでも優しいじゃん?他の子と楽しそうに話してたりするから、何てゆーか私じゃなくてもいいのかなって思ったりして…』

「心配しなくても裕次郎はやー一筋だから安心しろ」

『でも――』

「そんなに気にするなら裕次郎に直接言ったらいいだろ」

『それが出来たらこんなに悩んでないよ』

「面倒臭いヤツやっしー」

そういい平古場は名前のほっぺをつねる。

『いひゃいっす。ふぉっふぇひゅねらなぃでくだひゃい〔痛いっす。ほっぺつねらないで下さい〕』

「やーが言えないならわんが言ってやろうか?」

『いいよ。重い女って思われたくないもん』

「…やーがそぅ言うならいーけどよ。まぁ頑張れよ。あ、今日部活見に来いよ。裕次郎が寂しがってるから」

名前の頭を撫でて平古場は去って行った。

自分のクラスに戻る途中、小さく呟く。

「結局すれ違ってるだけやっしー…」





テニスコート

平古場に言われた通り、名前は部活を見に来ていた。

「裕次郎」

テニスコート内で平古場は甲斐に話かける。

名前からは少し離れているいるため、会話は聞こえない。

「ん?ぬーが〔何だよ〕?凛?」

「ちょっとやー、顔貸せ」

「ぬーが〔何だ〕って言ってるあんにー」

少しイラっとしながら甲斐は答える。

「やー、名前をあんま不安にさせるなょ」

「どーゆー意味ばー?」

「後はやーで考えるんだな」

二人が話していると後ろから木手が話しかける。

「甲斐君平古場君、無駄口叩いてなぃで練習しなさいよ。ゴーヤー食わすよ」

「「うぇ、ゴーヤーは勘弁」」

二人でハモって急いで練習を開始する。

それを見届けた後木手も練習へと戻る。





部活終了後。部室

「裕次郎、やー今日は名前と帰れ。そのために名前を部活に呼んだんだから」

ジャージを脱ぎながら凛は口を開く。

「でも今日一緒にCD買いに行くって言っただろ」

「うるさいな。名前と一緒にいてやれってコトやっしー」

「…言われなくても分かってるさぁ」

そう言い着替え終わったのか甲斐は部室を出て、名前の元へと向かう。





校門。

「名前」

少し俯いていた名前だが甲斐の声を聞き顔を上げる。

『裕次郎…』

「帰ろうぜ」

『うん』

二人で歩くものの会話がない。

沈黙に堪えかねたのか甲斐が口を開く。

「なぁ、最近わんのコト避けてないか?」

『え、そんなコトないよ?』

「ゆくし〔嘘〕。今もわんと目合わせてないだろ」

『そんなコトないって』

「だったらわんの目見て話せよ」

甲斐に言われ目を見る名前だがすぐに逸らしてしまう。

「…名前、わんのコト嫌いばー?」

『ち、違うよ!!』

「じゃー何で最近避けてるんだ?」

『別に…避けてる訳じゃ――』

「言ってくれないと分からないさぁ」

名前の言葉を遮り甲斐が口を開く。

その表情はいつになく真剣だ。

『…裕次郎は私のコト好き?』

「当たり前さぁ!好きじゃなきゃ付き合わないって!!」

『じゅんに?〔本当?〕』

「じゅんに〔本当〕。何でそんなこと聞くばー?」

『裕次郎はみんなに優しいから本当に私のコト好きなのかなぁって思って』

消えてしまいそうな程小さな声で名前は呟く。

それを見て甲斐は名前を抱きしめる。

『裕次郎?』

「わんは名前のこと好きだ。不安にさせてたなら謝る。でもわんはやー一筋だ」

そう言って甲斐は名前に口付ける。

『裕次郎(///)』

「いいとこ連れてってやるさぁ」

ニコっと笑い甲斐は名前の手を引き走り出す。





「大丈夫か?名前?」

『…大丈夫、じゃっ、ないっ、ゆうじろ、速いっ』

流石テニス部、というべきだろうか。

甲斐は余裕の表情だが名前は息を切らしている。

『ここ、どこ?』

「わんのお気に入りのシルバーアクセサリーショップ」

そう答えると名前の手を引き店へ入る。





店内を見て周り、シルバーリングの前で立ち止まる。

「おっちゃんこのペアリングくれさぁ」

「ほらよ」

ペアリングを買った後二人は店を出て公園へ向かう。





公園

「名前、手ぇ出して」

『うん』

甲斐は名前の手を取り、結婚指輪をはめるように左手の薬指へと通す。

「結婚式みたいやっしー」

ニカっと笑って甲斐は続ける。

「わんもリング付ければうんじゅなーたー〔みんな〕が、わんにいなぐ〔彼女〕いるって分かるし、名前も安心出来るだろ?」

そういい自分でリングをはめようとするが名前に遮られる。

『…私がはめていい?』

「ん?じゃあお願いするさぁ」

リングをはめ終え、二人はリングを見つめる。

「今はこんな安モンだけど、大人になったらもっと高いヤツ買ってやるさぁ」

照れているのか甲斐は横を向く。

そんな甲斐に名前は抱き着く。

『ありがとっ!大事にするね!!』

「お、おぅ!」

『裕次郎、大好き!!』

「わんも名前のこと大好きさぁ」

二人はどちらともなくキスをする。

それを見守るかのように月は優しく輝く。

「そろそろ帰るか」

『うん。…裕次郎、手、繋ご?』

「ほい」

甲斐と名前は手を繋ぎ家路へと向かう。





次の日テニスコート。

「裕次郎、左手のソレぬーが?」

「いーだろ。名前とお揃いさぁ」

これみよがしに見せ付ける甲斐だが、木手に遮られる。

「そんなモノ着けていたらテニスの邪魔でしょう。外しなさいよ」

「嫌だ」

「ゴーヤー食わされたいの?」

「うげ。ゴーヤーも嫌だけど外すのも嫌さぁ。ってゆーか邪魔じゃなければ何も問題ないだろ?」

「試してみるか?」

「頼むさぁ」

コートに入り、平古場と甲斐は軽く打ち合う。

「どうでした?」

「………(汗)」

「邪魔だったんだな」

「だから言ったでしょう。外しなさいよ」

「でもこれだけは譲れないさぁ」

そんな話をしていると練習を見に来たのか、名前が現れた。

その左手には甲斐とお揃いのリングがはめられている。

『みんな何の話してるの?』

「うわぁ?何で名前がここにいるばー?」

『暇だから遊びに来てみた!で、何の話?』

「ペアリングがテニスの邪魔になるという話ですよ」

「木手、名前の前でそーゆーこと言うなよ!」

木手の発言を気にもせず、名前はカバンの中から何かを取り出す。

『私もそう思って昨日家で色々考えたんだ。どうしたら邪魔にならないかなぁって。で、これ!!』

そう言って取り出したものを見せる。

「…紐?」

『そ。裕次郎リング貸して』

「ほい」

甲斐はリングを外し名前に渡す。

『これをココに通してこうすれば…っと。出来た!』

ニコっと笑って名前は出来上がったものを甲斐の首に回す。

「これ、ネックレスばー!?」

『うん!!こうすれば邪魔にならないでしょ?』

「………」

『アレ?気にいらなかった?』

無言になる(震えてる?)甲斐を見て名前は少し不安になる。

と、次の瞬間甲斐に思いきり抱きしめられる。

「わんのコトそこまで考えてくれてたなんて嬉しすぎるさぁ!名前、でーじ〔すっげー〕大好きさぁ!!」

『私も大好きだょ!!裕次郎!!』

いちゃつく二人を見て木手と平古場はやれやれと息を吐く。

「神聖なテニスコートでいちゃつくのは禁止やっしー」

「ってゆーか練習しなさいよ」

そんな言葉を聞いていたか否か甲斐は名前の手を引き走り出す。

「悪ぃ。今日は部活サボるさぁ」

『裕次郎?いいの?』

「名前がいるのに練習してる場合じゃないだろ?走れっ!」

『ちょっ、コケるっコケるっ!』

全力疾走で二人は走り去って行った。

残された二人はというと…

「追い掛けなくていいのか?永四郎?」

「いいですよ。後でゴーヤー食わせますから」





後日。

練習をサボったせいで甲斐はゴーヤーをたんまりと食わされたのだった…





END





☆よろしければ掲示板に感想等を書き込んで下さいませ☆

[*前へ]

5/5ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!