夢
紅い華 †裏夢
「名前。ソコがじゃん〔蚊〕に刺されたんばー?」
始まりは部室での甲斐の一言。
『どこ?』
「鎖骨のとこさぁ」
『見えない…誰か鏡プリーズ!』
「あぃ」
そう言って鏡を渡すのは知念。
『ありがと、寛』
名前は鏡で鎖骨を確認する。
そして一気に顔を赤くする。
「名前顔赤いさぁ。どーしたんばー?」
『なんでもないっ!』
「…がじゃん〔蚊〕だったらもっと腫れてるだろ。やったー〔お前ら〕鈍いやー」
名前の鎖骨をまじまじと見ながら平古場が続ける。
「これはアレに決まってるさぁ」
「アレってぬーが?〔なんだ?〕」
「そんなもん、決まっとぅさぁ。キスmー…もがっ」
『わーわーわー!』
名前は慌てて平古場の口を塞ぐ。
「ぬーが?〔何?〕」
『なんでもない!ただの虫刺され!(///)』
「むがごご…」
「名前、早く手ぇ離さないと凜が窒息するんどー?」
『あ、ゴメッ!』
「…死ぬかと思ったさぁ」
『ゴメン。でも凜が悪いんだからね』
「ぬーがよぉ?〔なんでだよぉ?〕ソレに気付かないやー〔お前〕が悪いんだろ」
そんなことを話しているとガチャリと部室のドアが開く。
「騒がしいですね。何の話ですか?」
そこに立っていたのは木手。
くぃっと眼鏡を上げる。
「名前の鎖骨にある虫刺されの話さぁ」
頬杖をつきながら甲斐が言う。
「虫刺され…?」
つかつかと名前に歩み寄り、鎖骨を見つめる。
そしてふっと笑う。
「虫刺されではないですよ」
「じゃあぬーが?〔何?〕」
「キs――」
『わーわーわー!』
顔を赤くしながら名前が遮る。
「ぬーがよぉ?〔何だよぉ?〕」
肝心なところで邪魔されるからであろう、甲斐はしかめっ面をしている。
「だからキスマークですよ」
騒ぐ名前をあやし(!?)ながら木手がさらりと言う。
「キスマーク…??」
『っ(///)』
?マークを乗せる甲斐と真っ赤になる知念。
彼らはピュアっ子ですね。(by諒)
『何で言うのさ?永四郎のふらー!〔バカ!〕』
「ほぅ?俺にそんな口聞いていいんですか?なんなら今この場で犯して上下関係を教えてあげましょうか?…身体に」
口の端を歪め、永四郎が楽しそうに言う。
「名前はいい声で啼きますからねぇ…」
『ちょっ!(///)』
「なんのことばー?」
「裕次郎。やーはまだ知らなくていいことだばぁ。ホラ、お兄ちゃんがテニスして遊んでやるさぁ」
「やー〔お前〕はわん〔俺〕と同い年やっしー!訳分からないさぁ!」
平古場に背中を押され甲斐は渋々部室を出る。
「わ、わんも遊ぶさっ(汗)」
知念も慌てて部室を後にする。
その様子を横目でチラリと眺め、言う。
「邪魔者はいなくなりましたね」
『…ってか、私がキスマークのこと隠してるのに何で言うかな?』
拗ねたように名前が呟く。
「自分だけ痕付けられて嫌だっていうなら、俺にも付ければ良いでしょう?」
そういって木手は自分の鎖骨を指差す。
『〜〜〜っ(///)』
「…付けないんですか?」
『付けて、やるわよっ』
それはまさに売り言葉に買い言葉。
少し背伸びをして木手の鎖骨に口付け、チュッと音を立てる。
お互いの鎖骨に咲く紅い華。
『私だってやるときはやるんだからね!』
「はいはい。…ちゃんと出来たんだからご褒美あげなきゃね」
そう言い木手はじり、と名前に近づく。
『いや、そんなのいらないし』
木手が近づくのに合わせて名前も一歩下がる。
「遠慮しなくていいですよ」
『するから。普通』
トンっと名前の背中が壁に当たる。
つまり、これ以上下がることができない。
「逃げ場がなくなりましたね」
名前を挟むように壁に両手をつく。
逃げ場を完全に無くす為に。
『えっとぉ…』
名前は木手の顔を見ることができず顔を背ける。
「こっち見なさいよ」
名前の顎に触れ、自分の方を向かせる。
『っ(///)』
一度目を合わせてしまえば、離せなくなる。
まるで魔法にかかったかのように。
「かなさん(愛してる)名前」
そぅ呟き、名前に口付ける。
深く、深く――
貪るように。
『ん、くるし、よ…えーしろ』
名前が酸素を求め木手の胸を叩くが、木手は構わずコトを進める。
『ゃ、あ(///)』
「ここは嫌とは言っていませんが?素直じゃないですね」
妖しく笑いながら木手が続ける。
「名前、あなたはどこまで俺を溺れさせるつもりですか?」
情事後。
『ん…』
木手は寝ている名前にそっと口付ける。
そして新しく紅い華を咲かせる。その華を指で撫でていると名前が目を覚ます。
「目を覚ましましたか?お姫様」
『…普通学校でヤるかな。しかも部室で(///)誰か入ってきたらどーすんの?』
先程の行為を思い出し、真っ赤な顔をして名前が言う。
しかし、木手は涼しい顔をして言う。
「俺は場所にはこだわりませんが?何か?」
『何か、ってね?どうしてそうかな』
「俺は」
真剣な顔で木手が言う。
「名前に心底溺れてるんですよ?あなたは違うんですか?」
テニスをしている時と同じ位、真っ直ぐな瞳。
黒というより、紫に近い瞳を見ていると、吸い込まれそうで。
名前は思わず息をのむ。
『…違わないけど、ね?場所は考えようよ?』
「一応考えて優しくしたでしょう?」
『どこがだよ!』
「おや?学習能力のない人ですね?躾が足りませんか?」
そう言ってまた口付ける。
『っ(///)十分足りてます』
「まぁ続きは夜、俺の部屋で。部室でヤるのもスリルがあっていいけど、それじゃあ名前があまり啼いてくれませんからね。…使いたい道具もありますし」
『なっ(///)』
「行きますよ」
涼しい顔をして名前の手を引く。
互いの鎖骨に紅い華を咲かせて。
それは互いに溺れている証。
溺れれば溺れる程、その華は数を増していく…
END
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