ネカマ
昨夜のおそい時間のことだった。
「正直言って人間不信。気が合うなって、思うと大抵おっさんなのよ!
嫌だ!
サエズッターとかさあ!
顔がわからないからなのか、私の心が男なみなのか! 次こそ女子だーって思って話しかけたら、やっぱり男なんだよ。わかる?」
寮の中でフィルは悶えて、親友にでんわをしていた。
2018112
「ふふっ、あはは、フィルったら、おもしろい」
ツルナルールは、くすくすと笑い声をもらす。
「ネットにゃ何人男がいるんだよ! むしろネカマしかいないんじゃないの」
「うーん……、どうなんだろうね」
「『女子としてわかります!』とか言い出すのが、8割おっさんだし。料理画像にやたら素材気にすんのもおっさんなんだよぉ……」
「謎の経験値が身に付いたねー」
「クローンと、私たちの境目がないとこが、いいとこだったけど。
でも、こうもおっさんしか居ないと、凹むわ」
おっさんが悪いわけではないことは、フィルもわかっていた。
フィルが閲覧するジャンルの割合がいけなかったのかもしれない。
彼女は哲学やら何か難しそうな話が好きだった。しかしクラスメートの女子は、アイドルやらスポーツ選手やら彼氏で忙しい。とても、そんな話題を持ちかけはしないだろう。
だからこそ、クローンとも自由に交流の出来る『広場』のそういったカテゴリにアバターを置いたことがあった。
趣味の合う同年代くらいの同性の友人がほしかっただけなのだが。
「アバターが女子なのに、8割おっさんなのよ……しかも、年齢鯖読みなのよ」
フィルが知ったのは、ネットでおっさんにしか好かれないのではという懸念と、人間不信だった。
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