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「なぜ、此処に……」

警備員はいないのだろうか。そもそも、女子寮にどうして。

「ストックが、無くなりましてねぇ?」

ハハハ、とストックマニアが笑う。

「私としては、ストックフィリアと呼ばれたいですが」

「あんたの嗜好なんか、知ったこっちゃないのよっ」

真っ黒なマントで全身がおおわれ、姿はわからない。


 バチが当たったんだろうか。元々、人がそんなに好きじゃないことを隠していたのは悪かった。

けど……
だからって無理に好きにならせようとしなくていいんじゃないだろうか。きみはきみ、私は私と割りきればいいのに。

「恋をしなきゃ、死ななきゃいけないわけ!? ねぇ、そのぶん優しくしてきたよ、そのぶん、周りをてつだったよ、キューピッドだってやった。

それが幸せで、それが私の代わりに、なってくれるなら、良かった、なのに……っ」


あんまりだ。
私は、他人ならいい。
気持ちがなければいい。私を好きにならないならそれで、いいのだ。

なのに、間違っていたんだろうか。
こんなとこで……




そのとき。
シュン、と風を切る音がして黒い影が体勢を崩した。

「え……?」

隙ができた。
なんかわかんないけど。
フィルはいそいで立ち上がると、握りしめた分厚い辞書を振りかざす。

「えいっ」

と、やろうとして、手が一瞬止まる。
愛を持たない相手なら、私も愛せるんじゃないかと、フィルは迷ったのだ。








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