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動き出す刻(とき)


「フィルローグ家のお嬢様、ごきげんよう」

 目を開けたとき、フィルが聞いたのはそんな声だった。
いつのまにか魔犬(気が強い)は大人しく主人の手元に戻っている。

「私はルチアノ! フィルローグ・デザイン社には世話になってるわ!」

ツインテ金髪美女(気が強そう)の愛犬が、こいつなのだろうか?
フィルはしばらくぽかんとしていた。

「ミドリが粗相をしたようね、ごめんなさい」

「間に合ってよかったぁ。もう少しで天国に向かうとこだったわー、わんちゃん共々」

フィルが笑顔を向けると、彼女はぼそっとなにか呟く。丸腰ならと思ったけど、反撃にあい、さすがに死なれちゃ敵わないというのがルチアノの本音だ。





「まぁっ、とんでもない。ミドリは、ルチアノ家の光!」

大袈裟なくらいに驚いて見せるルチアノ。

「放し飼いはいけないと思うわよ。寮はペット禁止だし。犬に噛みつかれて死ぬなんて嫌だもの。
家の光なら、首輪でもつけてきちんとしつけなさい」

 ギャウギャウ言っている家の光(ミドリ) だが、ルチアノが撫でるとうっとりした表情も見せる。
「で。何しに来たの?」

フィルは改めて、冷静に問う。

「少し、あなたに来て欲しいところがあるの」








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