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教室に上がるための階段の前のドアには結界が貼られていた。
「おっとと、これに触れちゃいけないんだった」
結界だって。
おおげさだよと彼はため息を吐きたくなった。
仲良くしようなんていいながらも、この薄くも頑丈な壁はなんなのか。
「ストックフィリアがみんな殺しちゃえば、もう狙われないし、維持費負担もなくなるのに。どうせ数百人だろ?」
彼はなにかに苛立っていた。なにに苛立っているのかはよくわからないが、そう、いうなれば嫉妬だ。
『あの』ほややんとしたアホの子みたいなツルナが。
俺と違うクラス。
しかも……
あの『純血』。
隔離は悲しいことだが、憧れるやつらも多い。
なぜなら彼らは世間では、まれにすぐれた能力を持つ場合があるとされている存在であり、存在そのものが価値だからだ。
まるで、自分が劣っているような、ツルナが手の届かぬ存在になったような、その感覚は、なんとも言えず悔しかった。
誰かに張り合い、見下すことで維持してきた彼のプライドのもって行き場としてまずふさわしかったのが、昔はよく同じ家で遊んだ彼女だ。
なわとびは出来ないわ、バスケでボールを顔面に受けて涙目になるわ、物はよくぶちまけて溢す。彼の中でツルナはそんな存在だ。
誰かが居てやらないと、なにをしでかすのかというくらいの、どうしようもない、俺様以下。
あのドジっ子が……
彼の中では、それはあまりにも理解しがたいことだった。
思い返すだけでイライラが募る。
ある年のまだ肌寒い月。
「私、この学校受けるから!」
いつもほややんとした彼女が両親にやけに強気でパンフレットを差し出した。
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