きがつよいまけん
ドアの向こうに居たのは、大型な犬だった。
目をぎらつかせ、獰猛さをたたえた視線をもって牙を剥いている。
獲物を狙っている。
まるで……魔犬だ。
「いぬ?」
フィルは不思議がった。なぜなら寮はペット禁止なのだ。
気が強い魔犬が現れた!
彼女は頭の中でテロップを引き出してみたが、あんまり愉快にはならない。
ドアがだんだん開いていくうちに、観察しようとして顔をあげたときには、犬、にしては少し、足が、倍の数あり、頭も4つに分かれていたことがわかった。
「ま、魔犬だ……!」
やはり、気が強い魔犬で間違いがなかった。
それか。
魔改造されたクローン犬!
彼女は近くにあった分厚い辞書を手にする。
「怪我したくなかったら、おとなしく下がりなさい!」
頭のひとつは戸惑いを浮かべ、もうひとつはりりしく睨み、もうひとつはグフグフと笑い、もうひとつはきゃんきゃん吠える。
同じ胴体に繋がるが、それぞれの人格を有していた。
涎をたらしながら、一番メインの頭がしゃべる。
「うわんっ! てめーぇがァッ!純血っつーワケダヨナァ!! 違うかァ!?違わねぇんだよ!くたばれ!」
この魔犬……そうとう気が強いみたいだわ。というか私、まだ何も答えてないわよ。
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