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短編
極道さんにお迎えを


俺の人生21年。結構濃い人生だった。大学は辞めさせられ借金のために永久就職した就職先はヤクザの親分の寝室。
あぁん、でもうだめぇえな仕事だったけれど組長さんに愛されて俺も愛して夜はらめぇえ!にレベルアップ。いや、こんなことは言ってないけど。
組の皆とも仲良くなって、喧嘩しても仲直りして、新しいバイトも探した。組長さんに阻止されたけど。
虎三郎も熊太郎も幸せそうにピカピカ輝いているし、俺の毎日も輝いてた。
幸せで幸せでどうしようもない日々だった。両親は元気だし姉は未だにフリー。組長さんだってバリバリ睨みきかせて肩で風切ってるし順風満帆、障害なんてぶち壊す勢いで甘い生活を送っていた。
ああもう本当にいい人生でした、思い残すことなんて















ありまくりに決まってんだろうがァァアアア!!













−−極道さんにお迎えを−−

ハロー、俺は杉野真人。知っている人も知らない人もよろしく。恋人兼情夫(この順序は重要!)京楽忠孝組長と毎日ウハウハしていた真人です。
でもって今俺はどこか分からない座敷牢の中に入れられてる。え?プレイじゃねえ!!
事の始まりは二日前、俺と組長さんのデート中に起きた。
組長さんが庶民の味、味○ラーメンに連れて行ってくれると言ったので俺は待ち合わせをしていた。久しぶりの○千ラーメンに胸が高鳴って油断していたのかもしれない。
気づいたらボディガードは倒されて俺はクロロホルムを嗅がされていた。
御免、組長さん。俺、捕まった…。
そう思ったのが最後で、目覚めたらここに入れられていた。
ご丁寧にも赤襦袢で。ここに入れた張本人の趣味が伺えるぜ…。これが組長さんに着せられたんなら…襦袢を着た俺を押し倒す着流しの組長さん…す、す、素敵!!
てかお腹空いたんだけど。トイレなら向こうにあったけどシャワーないし。監禁するにしてももっと設備が整った場所にしてくれないかな。
ご飯は一日一回、水は三回ペットボトルが届けられる。
組長さん、俺、腹減った…味○ラーメン食いたいぃぃぃ!!

「おい」

あ、チンピラ。いつも届けてくれる人だ。チャラチャラした金髪だけど根は優しいんじゃないかとか思う。組長さんに助けてもらったら、この人だけは助けてもらおう。
だって水と一緒におにぎりとか入れてくれんだもん。

「何?」

「水だ」

「ありがとう。なぁなんで俺攫われたんだ?」

「あぁ?そりゃ人質に決まってんだろ。京楽のイロなんだろ?」

「やだなぁ〜照れる!」

「はぁ!?」

照れて見せた俺に金髪は面白いくらいリアクションしてくれた。
イロだなんてそんな公言しないでくれよー、照れるだろ。

「お前、変わってんな。…見た目を裏切りすぎだろ」

「見た目?見た目どおりだろ、清純そうで」

「まずお前の見た目の認識から違ぇよ」

格子越しの会話は意外にも弾む。
それにしても人質?やっぱりか。俺、こうしちゃいられないかもなぁ。
暢気に組長さんが助けに来てくれるの待ってるけどあまり迷惑かけられないし。

「おい順平、イロはどんな感じだ?」

「あ、アニキ!」

順平?ああ、金髪のことか。
奥からゾロゾロ入ってきたのは数人の男たちだった。金髪はやっぱりペーペーであいつらは幹部らしい。
もしかしたら組長かも。
俺はミネラルウォーターを飲みながらのんびりと観察した。
脂ぎった中年のデブと同じく中年の痩せ型。ちょっと若い屈強な男たち。
組長さんのほうが数万倍カッコいい。

「お、オヤジ!」

「ほう、コイツがか。えらい別嬪さんじゃねえか」

「流石は京楽が囲うイロですな。白い肌に漆黒の髪。儚げな印象がまた美しい」

さ、さむっ!!
やべぇ鳥肌たったよ今。なんのハーレクインだよ。もしくはBLだよ。

「アンタたち誰?」

「口の利き方には気をつけな、嬢ちゃん。このお方は千石組組長、千石さんと幹部の方々だからな」

「へぇ。で?」

千石組?あー、そういえば組長さんがピロートークで言ってた気がする。「最近千石の奴らがちょっかい出してきてるからしばらく帰れねぇ」とか。
そっか。こいつらが俺と組長さんのデートをぶち壊し俺のもとに組長さんを帰してくれなかったんだ。
なるほどなるほど。

「まぁいい。嬢ちゃん、京楽をその身体で満足させてるんだろ?アイツ山ほどおった愛人、全部切りやがったからなァ」

「愛人はステータス。そんなもん常識なのに全部切るなんてよほどアンタにイカれてんだろうよ。そんなにイイ身体、俺たちがご賞味させてもらっても罰は当たらねぇよな」

「照れる!!」

「「はぁ?」」

や、だって照れるだろ?普通に。そんなの知らなかったよ、俺。
ていうかご賞味?え?ちょ、俺を抱くつもり!?
こんな奴らに抱かれたら俺、死ぬよ!?

「面白い奴だな…まぁいい、順平!鍵を開けろ。おっとお嬢ちゃん動くなよ?」

銃かよ!!ほんとヤクザって銃ばっかだな!
たまにはドス出せよドス!!
つか入ってくるなァアア!!来るなァアアア!!

そんな俺の願いもむなしく男たちは座敷牢の中に入ってきた。
俺、二日シャワー浴びてないんですけど、抱く気ですか?そうなんですか?

「ちょ、やめっ」

一人が俺の脚を掴む。なんでそんなにベトベトなんだよ!!
もう一人が腕。痛い!力強すぎっ。

「シミ一つない極上の肌じゃないか」

「吸い付くようだ」

同じ台詞でも組長さんのほうが数億倍カッコいいーー!!

「や、離せっ、やだっ!」

「飼い主に操を立てているのか?」

「カメラでばっちり撮って高値で売ってやるからな」

「もちろんお前の飼い主にも送ってやる」

お前ら死亡フラグー!!
組長さんもだけど俺もテメェら殺す!マジ殺す!!
でも逃げなきゃヤバイ、俺、マジで犯される。
それだけは!

「ココは開発されているのかね?」

ちょ、汚い舌で乳首舐めるんじゃねぇえええ!!
俺の身体はどこもかしこも組長さん専用なんだよ、テメェらが触っていい場所なんかひとつもねぇんだよ。
――!!
俺の口に突っ込みやがった!フェラなんて組長さんにも滅多にしないのに。
たまにねだってくるからやってあげる、特別な奉仕だったのに。くそっ、臭い。
苦いし洗ってんのか、ちゃんと。洗ってないだろ。

「萎えたままじゃないか」

誰が起つかぁああ!
変態デブオヤジ!!

「大人しくしろ」

俺に突っ込んだ男が俺に銃を突きつけた瞬間…俺は思いっきりそいつのアレを噛み千切った。

「ぎゃあああああ!!」

ソイツの銃を咄嗟に奪って股間を占領していたやつを回し蹴りしてその反動で身体を起こしざまに一番偉い奴の後ろに回って銃を突きつける。
流れるような動作、だろ?俺、こう見えて柔道の師範代なんだぜ?
ついでに関節技キメて腕の関節外しておく。

「俺に触っていいのは京楽忠孝ただ一人なんだよ!覚えとけ!!!」

誰だよ俺にかけやがったの。ムカつくー!!
俺は偉いやつを引き摺って座敷牢から出た。そろそろ組長さん来てくれないかな。
そのとき、外から凄い音と怒声。ホラ、以心伝心!!

「ナメた真似してんじゃねぇぞ千石が!!」

「組長さーん!」

「真人!!?」

俺は偉いやつを捕まえたまま扉に近づいた。バァンッと開けられた先、いたのは組長さん。
ちょっと焦った顔も俺を見て安堵する顔も乱れた俺の襦袢とところどころにかかった白濁を見て般若になる顔も全部カッコいい!

俺はさっさと銃を放り投げて組長さんに抱きついた。

「すまねぇ真人、こんなことされて…辛かっただろ?」

「組長さんが来てくれると信じていましたから大丈夫です」

すみません、こんな汚い身体で抱きついてしまって。そう続けると組長さんは抱きしめてくれた。強く、強く。
そして俺を離していった。

「俺はやらなきゃなんねぇことがある。お前は先に家に戻ってろ。今日は早く戻るから」

「はい」

そして俺は神田さんや瀬野尾弁護士に連れられて屋敷に戻り、構成員たちの総土下座にビビッた後ボディガードが指を詰めると騒ぐのを何とか押し留めてシャワーを浴びた。
それはそれは念入りに。ああもう気持ち悪い!!

そして日常が戻ってくる。

あの後聞いた話によれば組長さんは大層キレておられ、千石組は壊滅したとか。
何でも鬼神が降臨したのごとく暴れ回り、そんな組長さんは数年ぶりに見た、と瀬野尾弁護士が言っていた。

俺って愛されてるぅ!!





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