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幻滅デイリー
死亡予想図
「もしかしての話だけどさあ──、俺が死んだら……どうする?」
朝からずっと不安そうな顔をしては、遠くばかりを見ていた彼はぽつりと漏らした。やっと何かを言ったと思えばそれか、とぼくは皺の寄った眉間を人差し指の腹で押さえる。
「だから、死ぬとか簡単に言うなよ。お前は少しくらい、生き延びる事を考えろ」
伏し目がちの彼の頭を軽く、ぽんと叩いてやる。日本人の典型である、欝がちの彼には「頑張れ」と言うのはとても酷だと聞いた。しかし、眉を八の字にして悲しそうにする彼に何かを言ってやりたかった。
「何かさあ──、もう生きられる気がしないんだよ。死んでいるのか生きているのかも、解らなくなってきているし。もう……、駄目なんだ」
「駄目、なんかじゃ無いさ。絶対」
「………」
彼は、ぼんやりと焦点の合わない瞳でぼくを見つめていた。
「駄目、なんかじゃ無いさ。絶対」
まるで、自分に言い聞かすかの様に。

 そして、ぼくは自分が死んだ時にどうするかを誰かに訊かなければと思った。

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