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幻滅デイリー
雨約束
「約束、してくれはりますか?」
男は、女郎に言った。身形は良く、顔形も悪くは無い。どうやら、女は男にホの字の様らしい。
「約束は嫌いなんだ、嘘つきになるから」
睫毛を伏せる男。
「知ってはります? 南蛮には、一日だけ嘘を吐いてもええ日があるんやて。いつかは、アテも知らへんのやけど。その日に肖って、アテの為に嘘を吐いて貰えまへんやろか」
男の袖を握り締めて、女は肩を震わせていた。
「一年なんて、あっという間だ。すぐに、会いに来る。今回は、驚く程に安全な仕事なんだ」
男は、儚く笑う。
「もう、此処には来ないよ。俺は意外と、行く当てが多いんだ」
「アテ、ほんまにアンタが嫌いやわ」
女は目元に涙をうっすらと溜めながらも、気丈に言い放つ。
「俺も嫌いだよ。もう、二度と会いたくない」
「もう……、約束なんて嫌やわ……」

 雨は、男を隠していった。

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あきゅろす。
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