幻滅デイリー 無意識不意識非意識 意識しないと駄目だ。瞼を意識して閉じて、瞼を意識して開けて、意識して呼吸して、意識して笑わなきゃ。 「全く、愛想の無い子だね!」 左頬に、破裂音が響く。時間が経って、じわりと痛みを感じた。熱を発して、ずきずきと音を立てる。 「……痛い」 「本当は、痛くなんて無いんだろう? どうせ、鈍いんだから」 何デ、ソンナ事ヲ言ウノオ母サン? 「馬鹿な子! そんな目で、あたしを見るんじゃないよ!」 二発、三発、四発、五発……。掌、手の甲で頬を何度も打たれる。衝撃に任せて、首を振るだけ。 「さっさと、謝りなさいよ。この、唐変木ッ!」 何発目か、もう解らなかった。いつも感じているのは、殺して下さいという細やかな願い。 オ母サンハネ、オ兄チャンガ嫌イナノヨ。 「ごめんなさい……、解ってた……」 言われなくても。謝ったら、今日の苦行は終わりだ。でも、また明日が待っている。カナリアを喰らう猫みたいに、お母さんがぼくを待っているみたいに。 意識しないと駄目だ。瞼を意識して閉じて、瞼を意識して開けて、意識して呼吸して、意識して笑わなきゃ。 ね、意識していなきゃ駄目なんだよ。 [戻][進] |