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幻滅デイリー
慢性的妄想
 項に出来た、腫れ物に触れて確認する。中指の先に、確りとした感覚。
「何かに刺されたかな。でも、痒く無いし……」
合わせ鏡で見ると、赤く膨れて膿が溜まっている様だった。
「しっかし、何だろうなコレ……」
「あまり触ると、良くないかもよ。薬、塗ってあげようか?」
腕を組んで、俺の様子を見ていた妹が言う。
「ん……、じゃあ頼むかな」

 後ろ髪を軽く上げて、留める。下を向いて塗りやすくしてやると、ひやりとした感覚の後に体温が伝わる。腫れ物を中心から、円を描く様に薬が塗られていく。
「ね、お兄。この腫れ物がさ、もしかしての話だけどね。何かの虫が、卵を産み付けた物で最終的にウジャウジャッと出てきたら……」
「お前、SFの見すぎ。ちょっとは、控えろよ」
「でも、人の体に卵を産み付けて……」
「もう、良いって」
「お兄ッ!」
後ろで喚く妹を尻目に、俺は席を立った。何だ、最近のブームはSFなのかと思う。

 しかし、だ。虫が人間の体に、卵を産み付ける事など有るだろうか。いや、無いはずだ。人間の体に産み付けられ、育った虫ならば餌は人間という事になるだろう。だけど、本当に俺の項から虫が出てきたらと思うと背筋が寒くなった。

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