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幻滅デイリー
蚊蝶、夏の日
「ぴぃーーーーーッ」
夏祭りでの定番アイテムとでも言うのだろうか、吹き戻し。空気が入り伸びては、クルッと戻る。そして、再び吹き戻しに口を付けてと繰り返す。

 ただ、ぼくはこれを見る度に思い出してしまうのだ。あの、幼き頃の真夏日を。

 炎天下の中、小学校内の敷地の片隅で日陰に寄り添う。
「蝶みたいね」
「うん」
彼女がそう言うものだから、ぼくは何度もそれを銜えては吹いた。言われてみれば、確かに蝶の口に似ている。しかし、彼女はそれに付け加えた。彼女の癖は、いつも一言多い事。
「蝶と蛾って、生物学的に差は無いらしいわよ」
だから、ぼくは彼女が持っていたストローを見て言う。
「君は、蚊みたい」
缶ジュースの先から伸びる、透明のストロー。お誂え向きに、中身はトマトジュースだった。赤い液体がストローを潜り、彼女の喉を通過する。しかし、彼女は嫌な顔一つせずにクスクスと笑っていた。
「だって、わたしは蚊だもの」

 唐突に、彼女に会いたくなった。

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あきゅろす。
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