幻滅デイリー
ノー・リーズン
やっと、理解出来た。これまで、解らなかったのに。いや、解ろうとしなかっただけの事かもしれないが。ただ、納得だけはさせられた。
「つまり、理由は無いのだろうね」
「は？」
「君が、その行為に及ぶ理由さ」
男二人、ショットバーでアルコールをあおる。
「しかし、彼女は幸せなのかなあ」
「知るかよ」
タバコをくわえてライターを出すと、バーテンダーが灰皿を差し出した。俺はそれを脇に置いて、火を点す。そして、相手に紫煙を吐きかけてやった。
「全く、君は相変わらず攻撃的だな」
「別に、攻撃しているわけじゃねえよ。これは、俺にとっての呼吸と同じさ」
「ふふ、ますます質が悪い」
カウンターに体重をかける様なポーズで、彼は俺を眺める。
「見てんじゃねえよ」
「はは、良いだろう。見ても、減らないんだ」
「減るから、見るな」
ジントニックを一気にあおり、息を吐く。
「それにしても、理由が解らないなんて子供じゃあ無いんだから。行動原理に理由を伴わないなんて、獣にも劣るよ」
ひひ、と笑われる。
「彼女を殴って蹴って罵って、全く。このＤＶ男が、さっさと離婚に持ち込まれれば良いのに」
「言っただろう、理由はねえんだよ」
彼女をいたぶる事に、理由も意味も無い。
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