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幻滅デイリー
我輩は犬である
 我輩は犬である。猫とは違い、我輩にはちゃんと名がある。我輩の名前は、犬である。我輩の飼い主は、我輩をそう呼んでいる。我輩は、たまに考える。犬に犬と名付けるのは、人間を人間と呼ぶのと同じなのでは無いかと。猫に猫と名付け、亀に亀と名付け、兎に兎と名付ける飼い主は、恐らくセンスという物が欠落しているのだ。
「嗚呼嗚呼、来ちゃあいかんよ犬」
飼い主は、我輩をシッシッと追いやろうとする。しかし、無理にどかそうとはしない。飼い主が、近所で綱吉と呼ばれている所以である。
「ぶしっ」
「ほらほら、犬は鼻が良すぎるのだよ」
飼い主の部屋は、最悪に汚いと女の子にも評判らしい。
「自分は、片付けが苦手なのだがなあ。犬がやってくれたらなあ」
うんうんと頷くが、我輩には叶わぬ事である。
「ははは、仕方が無いなあ。このままでは、いつ虫が出るか解らんからな犬よ」
左様ですな、飼い主。この間、蜘蛛が出たと大騒ぎされていた事を思い出す。
「犬、そろそろ本気で出てはくれまいか。監視される、というのはあまり良くない感覚だ」
「きゅうん」
「そら、出た出た」
我輩は、しがない犬である。犬以外の、何物でも無いのだ。

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