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幻滅デイリー
あなたの為に
「ねえ、何で君は俺の側にいてくれるの?」
「それは、あなたが此処にいる事を許して下さったからです」

 彼女は笑っていた。俺は、いつの間にかそれが嬉しくて楽しくて、きっと時を忘れていたんだろう。

「ねえ、俺は君を忘れて殺してしまうかもしれないのに?」
「それは、あなたがした行為なのだから構いません」

 彼女は微笑んでいた。だから、彼女は全てを解っていたと考えて良いのかもしれない。

「ねえ、何で君はそんなに料理が上手いの?」
「それは、あなたに美味しい料理を食べてもらいたいからです」

 俺は、彼女の作るカレーライスが好きだった。ハンバーグも好きだったし、オムライスも好きだった。

「ねえ、何で君はこんなに柔らかいの?」
「それは、わたしにも解りません」

 彼女のその柔肌は、俺の体とはまるで違うものだった。高い背丈とは裏腹に、その身はとても華奢だった。

「ねえ、何で君はこんなに温かいの?」
「それは、生きているからです」

 どくんどくん、と血液の流れが煩いくらいに聞こえていた。その後、景色は赤くなっていて、俺は血溜まりの中にいた。

「ねえ、何で俺は此処にいるのかなあ? ねえ、何でだろうね死体? あれ? どうしよう、思い出せないや。何でだろうな、全然解らない……。まあ、良いか。知らない人だし」

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