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幻滅デイリー
報われぬ想いの行方
「大丈夫、君の手より大きいから」
わたしの右の掌と、自分の左の掌を合わせる彼。比べるにしても、何と幼稚で稚拙な行動。見舞いに行って、そんな事を言われるとは少しも思わなかった。
「……そうね」
「それに、君だって無理をして倒れるまでに仕事するんだから」
そう言って笑う彼を、わたしはとても遠くに感じていた。責任だの義務だのと、背負う物ばかりが多くて。誰の荷物だって構わずに、代わりに背負ってしまうのだから尚更質が悪い。
「だから、大丈夫だよ。心配なんか、要らないから」
それは、「お前に心配されたって何か変わるわけじゃない」と言われた様な気がした。
「何か、食べたい物はある?」
「ん、大丈夫だから」
好きだと言ったくせに、愛していると言ったくせに、結婚しようとまで言ったくせに。どうして、そんなに強がるのか全然意味が解らない。我儘を言えば良いのに、愚痴を零せば良いのに、うんと甘えれば良いのに。何に強がっているのか、何に意地を張っているのか、何を守ろうとしているのか。全然意味が解らないけど、たった一つだけわたしにも解る事がある。それは。

 わたしは、それでも決してあなたの一番になる事は無いという事。

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