幻滅デイリー
エチケット違反
「もう、サイテーだよ。意味解んないよ。何で、いっつもいっつもそうなの」
早口でまくし立てる少女は、グイと手の甲で唇を拭ってから更に言う。
「だから、自己陶酔に耽ったり、自分勝手に人を振り回したり、平気で人を傷付ける事が言えるんだよ」
「ふん。論理立てて話す事も出来ないのに、俺様に意見するのか小娘」
上から見下す様に、男は少女を小突く。少女はそれに怯みながらも、未だ意見する。
「その小娘に、翻弄されているのは何処の誰なのか教えてあげようか」
「ああ、聞かせてもらおうか。俺様は、お前が売春しようが死のうが全く興味が無いからな」
あっはっは、と高笑いをしながら男は「勝った」と言わんばかりに目を細める。
「とにかく、キスをする時くらいは瞼を閉じなさいよ──魚でもあるまいし。そんな時まで、目を開けておいて一体どうするの」
「ならば、お前に訊こうか。先程、キスをした後の事だが──何故、さっき唇を拭った？」
「そんな事、してないもん」
ふい、とそっぽを向く少女に近付く男。そして、これ以上無い程の上等で柔らかな笑みを浮かべて言った。
「細菌やら雑菌が気になるのなら、今度から口移しで消毒液を飲ませてやろう」
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