幻滅デイリー 御曹子 豪奢な装飾が施された椅子に、青年は踏ん反り返る。長い脚をこれまた無駄にきらびやかな事務机へと乱暴に投げ、喉を空に晒して指を組み合わせて瞼を閉じる。 「楽しく無いな」 「は?」 青年は静かに瞼を開け、近くにいた男を睨む。 「楽しく無いと言ったのだ、馬鹿者。主の言葉は一言も逃さずに、聞いていろ」 「申し訳ございません、若様」 壮年でも未だに屈強そうな男は、年端も行かない様な青年に謝る。 「お前、戦争は何の為に起こしているか知っているか。何の生産性も無い破壊と消費と浪費だけの毎日が続く、第四次世界大戦をどう思う?」 「は、私には……」 ただ頭を下げ続ける壮年の男に、年若い青年は更に見下す様に高笑う。 「実は、戦争によって文明が進化している部分もあるのだよ。それから、俺達の様な超上層階級が儲ける為だけにちょっと火を着けてやるのさ。ただ、それだけだ。解ったら、さっさとワインでも持ってこい」 昼間からアルコールか、と男は溜め息をつきながら青年の傍を離れて部屋を後にする。 「全く、武器商人というのもどうかと思うよ……父上」 青年がリモコンのキィを押すと、自動的にカーテンが開いて火の海と化した都市の展望が現れ始めていた。 [戻][進] |