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幻滅デイリー
食欲少女
 彼女は、食べられない物の味見をする程に飢えている様だ。例えば、バニラエッセンスも舐めたと言う(どうやら、甘い香りに反して痛い程に苦いらしい)し、石鹸もかじったと言う(お前は、鼠かとツッコミを入れてやった)し、甘い香りのする消しゴムもかじったと言う(衛生的にも、マズいだろうに)。とにかく、その食欲には呆れてしまう(もう、食欲云々では片付けられないだろう)。

「ほら、慌てて食べるからだ」
頬に食べていたパフェの生クリームを付けていたので、人差し指で掬って取って見せてやる。
「少しは、女の子なんだから気にしろよな」
「それは、男女差別ですよう」
彼女はむくれて俺を見るが、そんなのは気にしない。差別だろうが何だろうが、結局恥ずかしい思いをするのは彼女なのだから。せめて、俺が教えてやらなければと使命感を持ってしまう。ファミリーレストランだから、今は未だ笑って許せるけれど。俺は端にあったテーブルナプキンで指先の生クリームを拭き取ろうと、手を伸ばした。すると、彼女にグイと手首を掴まれる。
「は?」
よりによって、その生クリームの付いた指を舐め始めたのだ。
「お、おい、おま、ちょ……ッ!」
指の腹から先、爪の間まで舌が伸びる。彼女は一心不乱に舐めてから、フウッと息をつく。それに反して、俺はそのまま動けないでいた。そして、彼女はニッコリと笑って言った。
「ご馳走様でした」

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