幻滅デイリー
必要悪夢
君と一緒にみた悪夢なら、それは悪夢では無いはずだ。
「結婚しよう」
何の必然性があって、彼女と出会い結婚したのだろうか。例え、それが夢でも現実でも一生解りはしないだろう。彼女は、「はい」と厳かに応えただけだった。何故か教会では、短調で構成されたショパン作曲の『葬送行進曲』が流れていた。神父も祝う人も誰もいない静か過ぎる、廃墟の様な教会で結婚式は執り行われた。
彼女と出会った事で、ぼくはあらゆる物を捨てて生きてきた。それは、間違いでは無い。彼女は一言だって、「捨てて」とは言わなかった。何もかもを、ぼくは彼女に先行して捨てていった。
そして、最終的には自分を捨てた。この次は、きっと彼女を捨ててしまうのでは無いかと懸念しながら。そうして、嫌な汗にまみれて瞼を一気に開ける。
君がいた悪夢なら、それは悪夢ではないはずだと思い込んでいた。やはり、それは悪夢であったのに。ぼくは、君を必要悪だと気付かなかっただけなのかもしれない。
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