幻滅デイリー
空腹の娘
お腹空いたな、と少女はふと思った。
そうだ、昨日から麺類が食べたいと思っていたんだっけ。
二八蕎麦の看板が、ふと目に入る。
蕎麦かあ、良いなあ……。蕎麦は、ちょっとだけつゆを付けて喉越しで味わうのが一番美味しいんだよねえ。粋で鯔背な江戸っ子、っていったらこれだよね。パッと食べて、パッと出るっていうのが恰好良いのよねえ。おっと、刻み海苔は要らねいぜい。んんー、やっば、涎が。ん?
ごし、と手の甲で涎を拭う。そして、老舗饂飩の表示が目に入る。
あ、でもでもッ、饂飩も捨て難いよねえ。熱々の饂飩にさあ、ぶっかけは最強だよう。おまけにおまけに、卵があったら文句無しだよねえ。軽く卵を溶いて、熱々の饂飩に絡めて食べるの。湯気まで味がする感じで、ああんもう素敵過ぎ! 想像しただけで、更にお腹空いちゃうよう。
「どうぞー」という無気力な声と共に、チラシが渡される。
うわあ、パスタだあ。カルボナーラにナポリタン、ミートにペペロンチーノでしょ、アラビアータにシーフード。んー、パスタはレパートリがあるところが嬉しいんだよねえ。さっすが、女の子を解ってる。でも、ああん迷っちゃうよ。それでも、迷っちゃうくらいに好きなんだよねえ。
「あ、全部食べちゃえば良いんだ」
ウフッと笑ってから、少女はまず蕎麦屋に乗り込んだ。
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