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幻滅デイリー
酷な嘘
「……あッ?!」
回転扉に、女が挟まる。タイミングが悪かった事もあるが、半分は俺の責任かもしれない。慌てて駆け寄り、倒れた女を看る。もしかしたら、扉の圧で内臓器官に傷をつけたかもしれない。手や部分的にではなく、体ごと挟まったのだから。
「大丈夫ですかッ! すみません、誰か救急車を呼んで下さいッ! 手を貸して下さいッ!」
抱き起こせば、白いシャツに鮮やかな血が付着していた。背中に、嫌な汗が流れる。女はぐったりして、意識も無い様だった。親切なサラリーマン姿の男が、どうやら救急車に連絡すると名乗り上げる。取り敢えず彼に頼んでから、彼女の呼吸や脈や心音を確かめる。どれもが弱々しい反応で、女の意識は戻らない。ヤバい、もう駄目かもしれない。サラリーマンに、救急車の到着予想時間を訊く。俺には、既にそれくらいしか出来る事が無い。
「どれくらいで、来ますかッ?!」
「はいッ、ドッキリでしたーーー!」
看板を掲げたり、カメラやマイクを担いだ男達が影から姿を現す。聞けば何と、親切そうなサラリーマンまで仲間だったらしい。しかも、血は血糊を手の中に隠し持っていたらしい。俺は無言でマイクの柄を折り、カメラのレンズをブッ壊していた。

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