幻滅デイリー 白い粉2 ここ暫く、頗る調子が良かった。きっと、例の白い粉だ。あれを毎日、一口ずつ舐めてから社交的になった。元から、他人に話を合わせる事は苦手では無かったけれど。自分から、他人を誘うなんて自分が自分では無い様だ。でも、もう白い粉が無くなる。ぼくの足は勝手に、あの店へと向かっていた。 「あらあら、また来たのね鼻垂れ坊主が」 「あ、あの! この前、頂いた薬を──あの白い粉がを下さいッ!」 薄暗いカウンターの向こう側で、笑いを浮かべる大柄のオカマなんて気にしない。気になるのは、あの白い粉だけ。 「あの片栗粉なら、近所のスーパーマーケットに売ってるわよ」 「片栗粉……?」 茫然とした顔のぼくを、男は笑う。 「そうよお、ただの片栗粉。なあに、ヤバい薬だと思ったのお? やっだあ、法に障っちゃうし。それに、もう追われるのも捕まるのも勘弁って感じだしい。まあ、とにかく坊やが騙されやすいっていうのだけは解ったけど」 バシッ、と額を人差し指で弾かれる。 「野口英世も渡米した際に出会った野球選手が不調だったのを見て、ただの片栗粉を処方した逸話を聞いた事があるのよねえ」 「さ、詐欺だ!」 「いやあだ、詐欺っていうのは金品のやり取りがあって成立する物よ」 おまけに、勉強不足と詰られる。 「諦めなさいよ、アンタは結局変人の振りをしているだけなんだから」 [戻][進] |