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幻滅デイリー
武将の弟と下賎の女
「あの堅物の兄上が、書院に女を置いたのだってね」
弟が言うも無理は無く、彼の兄は隣国の姫を正妻に得てから一層それは目に見える様になった。
「どれ、わたしも一目見に行かねばの。うふふ、兄上の女の趣味が解ろうというものだ」
「しかし、かなり下賎の者らしく……」
「煩いな、爺。わたしの楽しみを、奪わんでくれよ」
あっはっは、と高笑いをしながら日頃から書物などを手にしない弟は書院へと向かっていった。

「お前か、兄上の女というのは」
後ろから弟が話しかけるも、女は黙って文机を磨いていた。一国を治める男の弟という自尊心が無下にされた、という事実が弟を憤慨させる。
「兄の女とはいえ、人をうつけにするもいい加減にしろ」
弟は女の肩を掴んで自らの方へと向かせた瞬間、女の美しさに言葉を失った。
「す、すまない……」
「ところで、何用でしょうか」
乱暴に扱ったにも関わらず、鈴を転がした様な声で応対されて弟は動転する。
「それより、何故直ぐに応えぬのだ」
「わたしの主は、弟君様がいらっしゃる事について何もおっしゃりませんでした。そして、弟君様にお会いした時の話もうかがっておりませぬ」
弟はこの女に感心して、いくつもの装飾品を贈ったが女は「衣装は支給されておりますので、十分で御座います」と断ったという。

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