幻滅デイリー ベースボール人生2 「言っておきますが、わたしの打率は十割ですから」 少女は青年に向かって、自信家の如く微笑んだ。 「じゅ、十割……」 ごくり、と喉を鳴らす青年。そして、驚きからか身をのけ反らせる。 「わたしは、わたしの思う通りに生きてきましたから。それに、わたしの願いが叶わなかった事は一度たりともありませんし」 「はは……、あはははは……ッ」 喉を空に晒して笑う青年を、唖然として見遣る少女。それは、異形の者を見る様な目付きだった。少女が怯えた表情で退くと、壁に背を打って目を見開く。 「な、何ですか……」 「いや、面白いと思いましてね。いやはや、プロ野球選手以上の打率ですか。それはそれは、お見それ致しました」 「馬鹿にしているのならば、それでも構いませんが。はっきり言って頂けると、わたしとしては有難いのですが」 怯え痛がりながらも、少女は虚勢を張る。 「それならば、ぼくも打率は十割だと思いましてね」 「まあ、それは素敵ですね。あなたも、わたしと同じなのですか」 少女は目を見張りながらも、指を組んで嬉しそうにした。 「ただ、例え一割未満だとしても気付いていないだけかもしれませんが」 [戻][進] |