幻滅デイリー ベースボール人生 「さて、ぼくは野球というものを知らないのだけれど」 「要は、投げられて打つ競技でしょう?」 青年の一言に、間髪入れず少女は言葉を挟む。 「まあ、そういうものだとは思いますが」 「あなたは風呂上がり、野球の試合を見ながらビールとか定番とは掛け離れていそうですし。どちらかと言うなら、蹴球の方が似合いますよ」 少女は青年の風呂上がりを想像して、口を押さえて苦笑した。 「はい、閑話休題。ところで、プロ野球選手の打率はどれほどだと思いますか?」 「え、急にそんな事を言われても……。筆記試験での落第点の基準は、確か六割程度ではありませんか」 「うーん、それでは長嶋茂雄も上回りますね。素晴らしい」 青年は、至極ゆっくりと拍手をする。すると、少女はごねる子供の様に青年の腕を掴む。 「もう、勿体振らないで下さい」 「はは、そうですね。プロ野球選手の打率は、大体三割ならば上々だそうですよ」 「さ、三割……」 少女は唖然として、青年を見る。 「冗談では、ありません……よね」 「本当です。さて、ここからが本題。あなたの人生における打率は、一体何割ですか?」 [戻][進] |